1 お金を稼ぐという事 1

毎日がきつい。
疲れ果てて帰って来た時は既に深夜。寝るしかない。だから目覚ましをセットして、携帯のアラームもセットして、次の日の朝に備える。これをしなければ(忘れてしまった事もあるけど)翌日は確実に起きれないんだ。
身体が自然に目覚めるなんて事がない。その感覚は遥か昔、俺がまだ学生の時にしか味わえなかった目覚めだと思った。今は身体の意志を拒絶してるっていう言い方が一番正しいかな。
まだ眠くて、頭だけは「なんとか起きなくては」と思うけども、身体が言う事を聞かない。そう、大きなロボットが身体の全部の回路をゆっくりと復活させるのに似ている。俺は起きてから最初にする事は身体に対してそれらの回路を接続してくれと思うことなんだ。そしてようやく手が動き足が動き、体重を支えるだけの力を得たら、ゆっくりと起き上がる。
鏡の前に立つ。
目の前の鏡にはかたつむりの会の人に「可愛い顔」だと言われた俺、つまり、男から女に性転換してる俺が、ありえないぐらいに酷い顔で映っているのだ。
そうか、一つ、解った事がある。
男が女へ抱く幻想を破壊するのは寝起きの顔を見せればいい。そして、それはまだ眠りたいと思っている顔である必要がある。別にそれは、化粧をしていないからとか、笑顔ではないからとかが理由じゃない。純粋に欲求を求めていて、それが獲られずにイライラしていて、寝起きだから猫をかぶる事も出来ないからだ。本当の醜い女の姿がそこにあった。
こんなに身体が疲れていて、毎日が辛くて、こんなに酷い顔になって、得られるものはなんだろうか?金?名誉?平穏?幸せな家庭?いや、どれも違う。得られるものは今のところ、「明日もまた辛い生活を送れる権利」である。
そう考えると本当に死にたくなった。