小説

12 一人飲み 6

身体から一瞬にしてアルコールが全部蒸発したような気分になった。カウンターに座っていたサラリーマン風の男、以前俺を指名したお客だった。確か、1回目は昼間にまるで会社を抜けだしてきてデリヘルを呼んだみたいな感じだったと思う。あれからまた昼間にも…

12 一人飲み 5

夜に出かけようと思っていた。夜ってのは具体的には人が少なくなり始める23時頃。だけどお腹が減りすぎて空腹でたたき起こされた感じになった。 22時の事だった。 それからテレビみたいしながらようやく23時となって、俺は昼間買ったワンピースに着替え、同…

12 一人飲み 4

よくよく考えると服というものは生活必需品の中にありながらもバリエーションが多くて、しかも高いものが多い。特に女ものの服は総じて高かった。 俺は黒のワンピースを買うことにした。 下着も合わせて買って、ガーターやらストッキングも何故か必要らしく…

12 一人飲み 3

「お決まりですか?お手伝いしましょうか?」 店員は俺が物色していた服と俺を見比べながらニコニコしながら話し掛けてきた。このお店にあるような感じの派手派手な服に身を包んだ店員。ちょっと化粧が濃い。垂れ目でお世辞にも可愛いとは言えない。俺が「お…

12 一人飲み 2

マユさんが何度か話をしてくれたのは、ここいら(デリヘルの待機部屋があるマンション)の近くに歓楽街があるし、そこで朝まで開いている飲み屋もある、って話だ。マユさんは行かないみたいだけど、よくこの店に勤めてる他のデリ嬢が行くらしい。 デリ嬢は俺…

12 一人飲み 1

水商売ってなんで水商売って言うのだろうかな、考えたことはない。 俺と同じくデリバリーヘルスで働いてそれで得た金で子供を育ててるマユさんにそれとなく聞いてみた。 マユさんも知らなかったみたいだ。 説として一つは湯水の如くお金を得ることが出来るけ…

22 2xxx年宇宙の旅 27

停止していた軌道エレベータが動き始めた。っていうのがなぜわかるかっていうと、僅かな電子音が響き始めたからなんだ。重力が制御されているので上昇しているっていうGは感じ取れない。 さっき網本が大量にばらまいたうんちはどうなったかって?もちろん、…

22 2xxx年宇宙の旅 26

クリさんがドロイドを操作し初めてから30分が経過していた。結構離れてたのね。ようやくクリさんは通信が万全な領域までドロイドを運び出すことに成功したと言ってきた。 「映像を送るぞ」 「あ、うん」 僕の脳の電脳にドロイドの視界が広がってきた。 目の…

22 2xxx年宇宙の旅 25

僕とクリさん、それからぶーちゃんは部屋の隅の方で身体を休めていたんだ。さっきから網本のうんちが宙を飛びまわっているからね。どうしてみんなあれに気付かないのだろうかと何度も不思議に思ったよ。 そんな時、さっきまで目を瞑って眠っていたクリさんが…

22 2xxx年宇宙の旅 24

網本のほうから奇妙な音が聞こえてくるのをみんな聞き逃すはずがなかったのです…。そして僕とクリさんが逃げ出しているのもみんな見てたから、様々な憶測が流れている…。 「何?何の音?」「今鳴き声が聞こえなかった?」「今の音ってもしかして…え、もしか…

22 2xxx年宇宙の旅 23

重力制御装置の故障から既に3時間経過。 相変わらずエレベータは動く気配がない…。あーん! 「クリさん、何か助けが来るような様子ってある?」 「いや、全然」 「ああ、どうしよう。ここで死ぬのかな…。宇宙にも行ってないし地球からも遠いし。まさかこんな…

22 2xxx年宇宙の旅 22

網本がタッチパネルのどこかを触って、画面が切り替わる。なるほど、僕達が乗っている軌道エレベータのカメラは一つじゃないみたい。メンテナンス用に用意されているのかもしれない。 そして切り替えている間に判ったんだけど…。 「なぁ…動いてなくないか?…

22 2xxx年宇宙の旅 21

「お、ついに宇宙に到着したのか!え?!そうなのか?!」 網本はニコニコしながらさっきのフロアの入り口の巨大扉の前にいる。 「あれ?止まったと思ったけど、止まってねぇのか?」 待っても開くときには開くだろうし、開かない時には開かないよ。ったく子…

22 2xxx年宇宙の旅 20

旅行会社の人は僕達の前で説明する。 「えー、それでは、これより軌道エレベーターでの宇宙の旅、今回の旅行のメインとなります!これから皆様にですね、このエレベーターで宇宙まで行ってもらいます、それから宇宙ステーションで3時間ほど滞在されて、その…

22 2xxx年宇宙の旅 19

さて、いよいよ今日は軌道エレベーターに乗る日なのです。網本は朝の5時ぐらいから起きて何やら気合みたいなのをいれています。この旅行のメインがそれにあるのだからわからないでもないけどね。 「はい、今日はこれから軌道エレベーターの基地の観光をしま…

22 2xxx年宇宙の旅 18

なんだか突然のクリさんの話に僕はちょっと腰を抜かしてしまった感じがある。身体に力が入らないや。えっと、なんだっけ…。もし僕が望んでるのならエッチな事をしてあげてもいいよ?って事か…。 「ええと…他の人に言わない?」 「私がそんな事を言いふらして…

22 2xxx年宇宙の旅 17

食事はあまりしなくて(まぁ適度につまむ程度にして)僕とぶーちゃんとクリさんはその後は屋台街に行って現地の食べ物を沢山食べたよ。飲み物は、例えば水だとかは日本人の口やお腹に合わないかも知れないから、っていう理由でやめとくことになったけどね。 …

22 2xxx年宇宙の旅 16

夕食は大広間のような場所で和食…なんだ、やっぱり。 日本のホテルで和食を扱っているところとおんなじ感じだ。そのフロアは最初から畳があるところじゃなくて、以前まではおそらく靴で出入りされていたであろう場所、そこに畳の様に見える素材の敷物が一面…

22 2xxx年宇宙の旅 15

夕食までにはまだ時間があるからか、僕達はお風呂に入っておくことにしたんだ。網本とぶーちゃんが来ることは想定外だけどね。 あれから僕は網本が近づこうとする度に思いっきり蹴りを入れようと構えていたからか、しぶしぶ諦めて今度はクリさんの側に近づい…

22 2xxx年宇宙の旅 14

部屋の準備が出来たらしくて、僕達はおじいさん・おばあさん連中に引き続いて部屋へと移動した。52階にある海が見える一室、らしい。ホテルの従業員の女性が下手くそな、ちょっと違和感のある日本語で説明してくれた。 「あの、やっぱり部屋って和風なんです…

22 2xxx年宇宙の旅 13

ホテルの内装は…外装と比べるとイメージががらりと変わっていた。洋風じゃない。和風なんだよ。騙されたって気分だったよ!遥々日本からマレーシアまで来てるのになんでホテルが和風なの…。 僕達の荷物は和服姿の現地の人?が部屋まで持っていった。 ロビー…

22 2xxx年宇宙の旅 12

海から見た軌道エレベータの地上部分…空中庭園は、『空中庭園』っていう言葉に似合うような綺羅びやかなものだったけど、いざ僕達がそこに辿りついてみると、意外にも外っ面だけはしっかりとしていて中は地味だった。 よくよく考えてみればそうだよね。あれ…

22 2xxx年宇宙の旅 11

乗り心地が悪くて魚臭い船を降りた僕達観光客一団はぞろぞろとゾンビの様に軌道エレベータの地上部分へと向かうロープウェイ駅に向かった。 軌道エレベータの地上部分…つまりは巨大な空中庭園となっている場所へは複数のロープウェイから向かうようになって…

22 2xxx年宇宙の旅 10

さてさて、かくして我々探検隊はマレーの都市ジャングルから海に出て、いざ秘境の地へと赴くのであった…。本当に大丈夫なのでしょうか?さっきからガイドらしき現地の人と旅行会社の人が英語でもなく中国語でもない言葉で会話してるのですが…。 と、僕が思っ…

22 2xxx年宇宙の旅 9

眠っていたのかな。 ぶーちゃんの肩に寄りかかっていたみたいだった。気付かなかった。 「あ、ごめん」 「い、いや、全然、いいよ」 停まっているのかな?飛行機の窓から見える外の景色はいつぞやの温泉に行ったとき、そこらじゅうから硫黄臭い白い煙が立ち…

22 2xxx年宇宙の旅 8

僕達が乗り込んでしばらくの間は客室乗務員の人達が慌しく乗り込んだり降りたりしていた。そりゃそうだと思うよ、プラン上この飛行機は長年の軍務を終えて倉庫へいったん入って、その後民間機に改造される予定だったんだからね。客室乗務員はそれこそ尻に火…

22 2xxx年宇宙の旅 7

クリさんがいつものハッキングを仕掛ける時に仕草をした。目を瞑って腕を組んでいるという仕草はよくない事をしている時の仕草なんだよ。 多分、旅客機のスケジュールデータを弄っているんだと思う。僕はそれを察知してさっきから定期的にスケジュールの中に…

22 2xxx年宇宙の旅 6

民間の空港には2種類の旅客機があって、一つはもう20世紀頃から使われ続けている翼のあるタイプの飛行機。第2次世界大戦の輸送機がモデルになっていて、それから殆どバージョンアップをしないままできてる。 その飛行機はハズレと呼ばれていて、ビジネスやエ…

22 2xxx年宇宙の旅 5

僕達の乗るバスは地元の空港へと到着。そこから飛行機で九州のほうの国際空港へ、次に国際空港からマレーシアの国際空港経由で軌道エレベータの基地へと行く。 地元の空港で初めてガイドっぽい人と出会う。 旅行会社の人みたいで、スーツ姿に胸の所に名札を…

22 2xxx年宇宙の旅 4

宇宙への旅行…きっと立派なバスガイドもいるしエコノミーな椅子じゃなくてファーストクラスな椅子も想像していた。 でもね〜、想像するだけならタダなんだよね、貧乏人はひたすら想像を繰り返すんだよ。幸せな想像をね。想像力だけは金持ちに負けないと自負…