22 2xxx年宇宙の旅 17

食事はあまりしなくて(まぁ適度につまむ程度にして)僕とぶーちゃんとクリさんはその後は屋台街に行って現地の食べ物を沢山食べたよ。飲み物は、例えば水だとかは日本人の口やお腹に合わないかも知れないから、っていう理由でやめとくことになったけどね。
食べ物はホテルにあったあの保存料たっぷりの日本産・中国産のレトルト食品と比べ物にならないぐらいに美味しかった。ちょっと辛かったけどね。
やっぱりさ、おもてなしの心って、日本人が客としてくるから日本人に合わせるんじゃなくて、現地の人が現地の文化でのおもてなしっていうのが一番いいと思ったよ。でもね、日本人に合わせたおもてなしを強いったのは、結局、どっかのバカな日本人が和食が食いたいだのとダダをコネた結果と思う。
確かに今の時代の日本は大戦を乗り越えて世界で2番目に戦争の強い国になったよ。精神面でも技術面でも。でも強いのと偉いのとは違うんだよね。インドネシアやマレー、タイやインドに台湾と協力して勝ち取ったんだから、それらの国に日本人が行ったとき、我々のお陰で君たちは今の生活があるんだと行ってしまえば、それは米帝と同じ事なんだ。
という野暮ったい話は置いといて、屋台街を満喫した僕達はホテルへと戻った。えと、誰か忘れてないかって、網本の事でしょ。彼は一人、風俗街へと足を運んでいったよ。多分。
明日はいよいよ軌道エレベーターで宇宙へ行くんだ。
ちょっとだけの期待を胸に、僕は部屋に戻ってシャワーを浴びた後、さっそく寝ようとパジャマに着替えていると、クリさんはシャワーを浴びたそのままで、屋外にあるジャグジー(っていうのかな)に入った。確かにジャグジーを体験できるのはもう今日で最後だからね、僕も一緒に入った。
月の光に照らされてクリさんの身体はとても綺麗だった。前から思ってたけどこの人って、凄いスタイルが良い。まるで作られたかのような…。人は顔は左右対称ではないって言われてる。どっかに歪みがあるんだ。だけどクリさんは顔だけじゃなく身体も、どこにも歪みがない。ん〜…ダメだ。変な事を考えてしまう。クリさんとは同じアパートの同居人って事だけなんだから、変な関係になるのはどうかと思うんだ、うん。
「ナオ、前から聞いてみたい事があったんだが」
「え?」
突然の質問に僕はドキッとした。
なんとなくだけど僕がちょっとエッチな妄想をしてしまったのが分かったんじゃないかって思って。
「ナオは身体は女性だが、心も女性なのか?」
なんでいきなりそんな質問が来るんだろう、と僕はちょっと焦ってしまって、しばらく回答出来なかったんだ。
「嫌なら答えなくてもいいぞ」
「あー、うん…えっと、心は男の子なんだよ。これを知ってるのってぶーちゃんだけなんだけどね」
「ふむ。何かワケがありそうだな」
「あー。あるね、あるよ。これは誰も知らない」
「なら無理にいう必要はないな。私も自分の事を無闇に話したこともない」
「クリさんも身体は女性だけど心は男性とか…?」
「私も実は自分の身体が女性なことについては若干違和感はあるが、正直どちらでもいい。ただ性別がどちらだったのかは残念ながら私のメモリーには無いのでな」
「メモリーに無い?記憶喪失?」
「そうなのだろうな。私がデータをコレクティングしているのはやはりそういう理由なのだろう。どこかが欠けている、どこかに満たされない部分があるから人は求めるのだろう。それが私にとっては自身の過去の記憶なんだろうな」
「思い出したいの?」
「いや。別に。そもそも、過去の記憶が欠けているからこそ、私はいまデータをコレくティングしているのかも知れない。それは楽しいことだし、記憶が満たされてしまった事でその楽しいことが失われてしまうのも嫌だしな。どうやら血液型はB型らしいしな」
「飽きっぽいB型」
「うむ。それで、話は戻るのだが、ナオは自身が男性だと言ったな」
「うん」
「女性に対して欲情はしないのか?」
僕は思わず飲んでいたブルームーンのカクテルを噴出してしまった。やっぱり突拍子もない質問をするタイプの人だと思ってたよ。
「そりゃ…欲情はするけど…。だからあたしはアニメとかエッチゲームとかを買ったりデータを集めてたりするじゃん。よくぶーちゃんと二人で電脳街に行ったりしてさ」
「ふむ。そうか」
「え、何?聞きたい事はそれだったの?」
「いや。リゾート地に来たからというわけでもないが、ナオには今まで色々とお世話になっているからな、私も身体は女だ。ナオが望むのなら、別に私の身体で遊んでもいいと、そう言おうと思っただけだ」
僕は思わず飲んでいたブルームーンのカクテルを噴出してしまった。やっぱり突拍子もない発言をするタイプの人だと思ってたよ。
「 って、マジで?」