22 2xxx年宇宙の旅 7

クリさんがいつものハッキングを仕掛ける時に仕草をした。目を瞑って腕を組んでいるという仕草はよくない事をしている時の仕草なんだよ。
多分、旅客機のスケジュールデータを弄っているんだと思う。僕はそれを察知してさっきから定期的にスケジュールの中にある機体の部分を睨んでいた。一瞬、全旅客機が『整備中』に切り替わった。次の瞬間、マレーシア行きの便の機体がアタリの奴に置き換えられていた。
「ちょっと気になったんだけど…。あたし達がこれから乗るのってはそもそも国内便で、マレーシア行くまでに燃料尽きたりとかないよね?」
「その辺りも考慮しておいた」
「国内便だったの?」
「うむ」
やばいやばい。スケジュールだけ置き換えられて燃料入ってなかったら途中で海に墜落するところだった。システムとデータだけで運用してるから勝手に置き換えたら不整合なところがでてくるんだよね。
「おい!すげぇぞ!あの強襲艦に乗ることになってるぞ!こりゃ徴兵されたかな?やべぇ、腕がなるぜ。戦争か!」
と網本が駆け寄ってくる。スケジュールを見たのかな。
「あれは旅客機だってば。なんで勝手に徴兵されてるんだよ。っていうか軌道エレベータはどうなったんだよ」
「ああ、そうか。俺はてっきり軍に戻れって言われてんのかと思った」
「そういえば網本は大戦中に乗ったことあるんだよね、ああいう輸送機だとかアサルトシップに」
「俺が乗ったことがあるのはヘリまでだなぁ」
そういえば網本が戦争の時に志願兵として軍に入っていたみたいだけど、その頃の頃はあまり具体的に聞いたことがないなぁ。僕は興味ないから網本が酔った勢いで話すのを待つしかないんだよね。酔っても武勇伝を一番盛り上がる部分だけ切り離して話すんで、それまでの経緯とかどこの部隊に配属されててどこの戦地で戦ったのだとかが全然抜けてる。
まぁ、興味ないからいいけど。
かくして僕達は旅行会社の人を先頭に、新型のアタリに乗ってマレーシアまで行くことになった。
そして船に乗り込むときに乗客と入れ違いになったんだけど、全員軍服着てるんだよ。あの迷彩柄の服。まさかねーと思って僕は窓から下を見下ろしてみる。よく見ると滑走路ににつかわしくない多脚戦車やら装甲車、バトルドロイドやらがズラズラと倉庫のほうに向かって移動してるんだ。
「えっと…クリさん、この飛行機ってさ」
「どうもマレーのほうの軍基地から物資を輸送していた奴みたいだったな。私も今気づいた。これから旅客機として利用されるべく、準備される予定だったみたいだ」
「え…ちょっ」
データの不整合をさっそく発見…。