22 2xxx年宇宙の旅 6

民間の空港には2種類の旅客機があって、一つはもう20世紀頃から使われ続けている翼のあるタイプの飛行機。第2次世界大戦の輸送機がモデルになっていて、それから殆どバージョンアップをしないままできてる。
その飛行機はハズレと呼ばれていて、ビジネスやエコノミーでその航空機に当たってしまった人は、まぁ悪いこともあるけどもこれから行く先ではその分だけ良い事がありますよ、と慰められる。一方でアタリと呼ばれているのがひとつ前の戦争で広く使われるようになった反重力コイルエンジンを搭載してる羽のついていないタイプの飛行機。そのまま宇宙空間まで飛んでいけるらしい。じゃあそのまま宇宙まで行けばいいじゃんという話もあるけど、燃料もバカにならないから無理だとか。戦争が終わってから軍用として使われていたものを民間用に改造してそれが空港に配備されるようになったのはここ最近の事だった。
「あ、アタリが降りてきたよ」
待合室の巨大ガラスの向こうには菱形をした飛ぶにはちょっと美しくない形をしている新型旅客機が降りるところだった。滑走路を斜めに降りる旧タイプと違って、垂直に空港に横付けするように降りてくる。そして結局は地面に足をつけることなく、宙に浮いた状態で人は荷物が出入りする。
「あれ…これってこの前あたし達が無人島でバカンスした時に空から降りてきたアサルトシップ(強襲艦)と同じじゃないかな?」
と僕がクリさんに聞いてみる。
「強襲艦はもう少し小さいな。これは輸送艦を改造しているタイプの船だ」
あの件の後で色々と調べてみたら、アサルトシップと呼ばれている船は偵察衛星として普段は地球の周りをぐるぐると回っているんだけど、国境沿い、つまり日本だと海上でまずいことが起きそうになったのを検知すると地上まで一気に降下して応援に回るらしい。
「あれに乗りたいのか?」
「え?あ、うんそりゃ。もちろん」
「乗り心地はいいだろうな」
「旧タイプの旅客機だって空を飛んでる感覚にはならないよ、時々ガタガタと揺れたりエアポケットに落ちて股間が嫌な感じになったりするだけで」
「ふむ…では搭乗スケジュールを少しいじってみるか」
ありゃ…言うんじゃなかったかな。クリさんがハッキングを仕掛けるとあまりよくない事が起きるんだよね。まぁいいか。旅行に付き合わされてるのも既に良くない事だし…。