22 2xxx年宇宙の旅 5

僕達の乗るバスは地元の空港へと到着。そこから飛行機で九州のほうの国際空港へ、次に国際空港からマレーシアの国際空港経由で軌道エレベータの基地へと行く。
地元の空港で初めてガイドっぽい人と出会う。
旅行会社の人みたいで、スーツ姿に胸の所に名札をつけている。PADを広げてぽちぽちとそれをつつきながら僕達、旅行に行く人達を一人づつチェックしていってる。
「はーい、みなさん!これから宇宙旅行に行きます!う、ちゅ、う、りょ、こ、う!途中で迷子にならないようにね、この名札をお配りしますので、胸に付けておいてください。ダサいからとか服に傷がつくからとかって付けられない方が毎回いらっしゃいますけど、迷子になったら大変ですからね!ちゃんと付けるように!」
フロアに響き渡るような声で言う…。やばいよ。恥ずかしいよ。僕たちは学生さんじゃないよ。修学旅行に行くんじゃないんだよ…。
紙袋に入ってる名札を一つ一つ、ご老人の方々に配っていく旅行会社の人。そして、
「おじいちゃん、これを胸のポケットとのところにね、つけてくださいよ。ここ、ここにつけるの」
「あーあー」
「ここ。こーこ!」
「あー」
「高島さん?高島さんですよね。ここですよ、高島さん。この胸のポケットのところに名札を、このクリップをかちっとね」
「あー…」
高島さん大丈夫なのかな?よくこれだけボケてるおじいちゃんが宇宙旅行に行こうって思ったよね。
「すいません、高島は私ですよ」と、白髪の女性が旅行会社の男性に言う。
「え?!えっと、じゃあ、このおじいちゃんは?」
「あー…」
「田中さんじゃないかねぇ」
「田中さん!田中さんですか?」
「あー…」
他の参加者が、
「田中さんとこのじいさんは旅行に行かんのじゃなかったかな。今日は病院行くって話とったぞ。持病の痔が酷くなったからとかでな。なんでここにおんのじゃ?」
「あら!バス停でバス間違えたんじゃなかろうか?」
「あー…」
誰か間違えると思ったよ…。病院に行く専門のバスがあるんだよ。老人ばっかり乗ってるんで間違ってそれに乗っちゃったんじゃないかな。最悪だ…。
「おいおいおい!なんだよこの展開はよ!病院に行こうと思って宇宙旅行に間違って来てるジジイがいるなんてよ!」と網本が言う。
ごもっともです…。
「まぁ、宇宙に行った後で気付かなくてよかったんじゃないのか」
「っていうかバスに乗った時点で誰か気付いてあげたらよかったのにね…」