22 2xxx年宇宙の旅 10

さてさて、かくして我々探検隊はマレーの都市ジャングルから海に出て、いざ秘境の地へと赴くのであった…。本当に大丈夫なのでしょうか?さっきからガイドらしき現地の人と旅行会社の人が英語でもなく中国語でもない言葉で会話してるのですが…。
と、僕が思っていた次の瞬間だった。
みんな一斉に声を上げて上を見たんだ。
びっくりしたね。そこには巨大な塔がそびえ立っていたんだ。いや正確には塔じゃない。塔っていうのは土台が地上にあって、空へと伸びているものでしょ?でも違うんだよ。宇宙のほうから垂れ下がっているんだ。その垂れ下がった塔は地面とくっついていない。不思議な景色が広がっている。
「ありゃ、どうなっとるんじゃ?」「ほぇぇぇっぇ」「空から建物が垂れ下がっておるわい」ほうぼうからそんな声が聞こえた。
「知ってるか?あれはな、地球の外のほうに飛ばす力と引力とが吊り合っているから出来るんだぜ。宇宙ステーションからカーボンファイバーの束が垂れ下がっていて、それが建物を支えてるんだぜ」
ほえぇぇ〜すごいな。宇宙の不思議。いや、人間の文明の不思議。重い鉄の塊が反重力コイルで宙に浮かぶのも凄いけど、これはまさにその延長線上にある凄さじゃないか。空から建物が垂れ下がっている光景なんてさ。よく見ると、そのぶら下がっている末端はホテルだとかのリゾート地になっているみたいだ。きらびやかな電飾がこれだけ離れている位置からでも見える。あれが本当の空中庭園って奴だね。いいなぁ。今日はあそこで泊まるのかな?
「あ、あのカーボンなんとかって、き、切れたりしないのかな?」
「切れるわけねーだろ!カーボンファイバーは日本製なんだよ!!!!日本製の奴は故障なんてしねーんだよ!!!」
ちょっと場違いな僕達が乗っているこの漁船は、それから1時間ぐらい船に揺られて軌道エレベータの麓の基地へと到着した。