22 2xxx年宇宙の旅 25

僕とクリさん、それからぶーちゃんは部屋の隅の方で身体を休めていたんだ。さっきから網本のうんちが宙を飛びまわっているからね。どうしてみんなあれに気付かないのだろうかと何度も不思議に思ったよ。
そんな時、さっきまで目を瞑って眠っていたクリさんが突然目をぱっと開いて、「ん?」と言うんだ。部屋はただうんちが飛び回っている以外はなんら異常なんか無い。
「どしたの?」
「微弱な電波を拾った」
「んん?」
プロトコルはAIだな。ドロイドのAIだ」
「えっと…。近くにドロイドがいるってこと?…あぁ、フロアのお掃除用のとかじゃないの?」
「どこにいるのか見てみようか。ちと電波が弱いので情報の送受信に時間が掛かるかもしれんが」
クリさんの言う時間、っていうのが随分と経過してしまったよ。ドロイドを発見してから30分ぐらい経って、ようやくクリさんが、
「いるな。外に」
「外?宇宙空間にいるの?」
「うむ。どうも、何らかの修理をする為に送られていたのが故障して何年もそのまま放置されていたようだ。だが、運良く動くぞ」
「マジで…?!って…それでどうするの?」
「うむ。おそらくこのエレベータ近辺でデブリ(地球軌道上をまわっているゴミ)に電源ケーブルやらがぶち当たったんだろう。それをこのドロイドを使って復旧させる事が出来れば、上に行けるかもしれない」
僕はクリさんの話の途中までは「ふーん」って感じだったけど、「復旧」って単語を聞いてからとても真剣に聴き始めた。なになに…。もしかしたらここから脱出出来るって事なのかな?僕は期待したよ。これほどクリさんのハッキング能力が頼みの綱になったことは今までなかったね。いつもクリさんの能力が何かしらの悪い事を引き起こしていたからね。そろそろ汚名挽回してもいいんじゃないかって、思ったんだよ。
「とりあえずこのドロイドを近づけて通信をしやすくせねば」
「うんうん!慎重にね」
クリさんは目を瞑って何やらいつものハッキングらしきものをしている。この間にゆっくりと僕らの救世主が近づいてくれてるんだね。ゆっくりと…。って、何か網本がこちらに近づいてくる。
「何?!何なの?!今いいところなんだから邪魔しないで!近寄らないで!」
「なんだよ。ちょっとクリちゃんにエロビデオ見せてもらおうと思ってさ。電脳の中に沢山ディスク持ってそうじゃん」
「そんなくだらない用事で近寄らないで!」
僕は目を血走らせて網本をこちらに近づけないようにした。今邪魔さえれたら僕達はここで遭難してしまう。いや、もう遭難してるんだけどね。
「おいおいおい、そんなに起こるなよ?うんちの事か?俺がうんちしたのが悪いんか?」
「ガルルルルルルルルルルル…」
「な、なんだよ。変な奴だな」
網本はさっきからスースーと寝息を立ててるぶーちゃんを指でつんと摘むと、そのままそれを引っ張って離れていった。
「ふぅ…」
「なんだ、アダルトビデオ用意できたのにいらんのか」
「ちょっ!!クリさん!ドロイドの操作に集中してよ!」
「あぁ、すまん。ただ、私の脳みそはマルチタスクなので平行で作業できるのだ」
「それはわかったから、とにかくドロイドの操作に集中して!もしアダルトビデオ見ててクリさんの脳みそがハングアップしたらもういっかんの終わりでしょ!!」
「…わかった」