12 一人飲み 4

よくよく考えると服というものは生活必需品の中にありながらもバリエーションが多くて、しかも高いものが多い。特に女ものの服は総じて高かった。
俺は黒のワンピースを買うことにした。
下着も合わせて買って、ガーターやらストッキングも何故か必要らしく、それをフルセットにして5万以上取られた。5万は今の俺が持ってる全財産からすれば安い値段ではあるけども、以前バイトしていた時に5万稼ごうと思ったら死に物狂いで色々と生活をやりくりしながらでなければ稼げない。
「はぁ…」とため息が出てしまう。
まぁ、店長も着たきりスズメ状態は勘弁してくれみたいな事を言っていたし、そういう意味では別に俺のプライベートだけのものじゃないから少しは5万も還元出来るかもしれないな。それにしても、俺以外の風俗嬢はさらに金掛けてるんだろうな。っていうかマユさんなんて同じ服着てるのみたことないからな。これはちょっとオーバーかもしれないけど(実際は同じ服があるのかもしれないけど)それぐらい、沢山服持ってる事になる。子供の養育費もバカにならんのによくまぁ、あれだけ沢山服買う金があるもんだ。
そのまま帰るのもあれなんで、俺は他にも欲しかったものを買うことにした。今俺が持っている携帯は旧世代のガラパゴス携帯って奴で、本当にプラスチック感の離れない安っぽい触り心地と見た目の携帯だ。持っていて俺は貧乏ですよってアピールしているようなものなんだ。だからこれも買い換えてしまおうと思った。
最近流行ってる海外物の携帯に変えようかな。
俺はアイフォーンって奴を買うことにした。
タッチパネルが男の時の俺の手にはフィットするけども、女になった俺にはちょっと大きすぎる感じはするけど、そこは我慢した。
これでお金持ちの仲間入りしたような気分になれた。買ったばかりのそれをちょこちょこと両手で持って(片手で持つと落としそうになるので)いじりながらネット見てみたり、何も入ってない電話帳を見てみたりと、暇つぶしには最適だ。
「やべ、これめっちゃかっこいいかも」
昼間の人の少ないショッピングモールの休憩所に一人腰掛けてぶつぶつと独り言を言いながら、携帯をいじりまくった。