1 かたつむりの会 1

先生の講義に参加させて頂きました。
事務所に電話しましたが、誰もいらっしゃらないのでメールにて失礼致します。
自分も先生のご意見には賛同致します。
人口の調整という話、非常に興味深いです。
実は私が運営しております、かたつむりの会で先生が興味を持ちそうなクライアントが沢山訪れております。是非、先生も彼女等と会ってみてください。
ただ、彼女等も真剣に自分のこれからの人生について考えていますので、あくまで相談役という形で彼女等に紹介する事になると思います。

送信、っと。
事務所の外は相変わらずの雨。陰鬱だ。
今日はこの「かたつむりの会」に初めて相談にくるクライアントの一人と会う。その初めてがこの雨というのは陰鬱な気分にさせる。
この「かたつむりの会」という名前が悪いのだろうか?
可愛らしい名前って理由で妻がつけたのだが。
と、考えていると廊下のほうから足音が聞こえてくる。スニーカーか?今事務所の前を通り過ぎた。それからまた戻ってくる。迷ってるのか?
廊下に出てみた。
いるいる。
肩まで垂らしてる寝癖のある髪、上下がジャージ姿、スニーカー、の女性。
「えと、かたつむりの会をお探しで?」
「あ。はい」
「こちらです」
「あ、すいません」
どもるような声。あと、人の目を見て話さない人だな。
よく顔を見てみると、なるほど可愛い。
この病気の特徴として最初にあげるのは顔がとても可愛くなる事だ。理由はわからないな。
どうも慌てて家を出てきた感はあるなぁ。着る服がジャージ…しかもぶかぶかか。サイズはLぐらいだろうか?男モノのL。
事務所に彼女を通して椅子に座らせて、とりあえずコーヒーでもと。
「ご両親は?というか、保護者の方は?」
顔を上げて初めて僕の顔をみたな。
「い、いません」
「いない?」
「離婚して、それで自分は母親のほうに引き取られたんですけど」
「うん」
「その…」
「お母さんはいまどこです?」
「今は、いません」
「いない?どこにいるかわかる?」
「わかりません。もう1週間ぐらい」
「居なくなる前に、何か兆候は見られた?」
「ええ。その…俺と、暮らしたくないって」
ああ。よくあるパターンだ。いや、離婚してるってのは今までにないパターンだったかな。離婚して母親と二人暮らしだったが、スイツラー病…つまりXX病に掛かって、男から女へと変異を遂げた。息子が娘に変わった。だから…ふむ。
自分の子供じゃないってか。