6 新しい生活・新しい部活 8

部室を出てテニスコートに行くと、何故か男子ギャラリーがいる。
その中に日和の姿が。
「おい、この野郎」
「いいじゃないか!最高だッ!」
日和、顔を赤らめてまじまじと俺の足元から頭まで舐めるように見てる。
「(男子ギャラリー)おぉ〜!」
「ほら、ちょっとだけテニスしてきてくれよ」
とか言いながら、日和は携帯のカメラを準備している。
「くっそー…」
っていうか、そのギャラリーは何なんだよ。
「じゃあ、行きますよ〜」
って言って俺にサーブをしてきたのはさっきの初音って人。この人、玉拾いしてた人だからテニス部の中でもあまり上手なほうではないから、と俺はちょっと安心してたんだけど、それは安心しすぎって奴だったみたいで結構うまい。いや、俺がゲームの中みたいにスイスイ動けないだけなのかもしれない。凄い身体が重い。
「(ギャラリー)うっひょ!」
なんだよ、うっひょって。俺、サーブを取り逃がしただけじゃんかよ。
俺のサーブの番。
たしかこんな感じでやってたっけ。ゲームでは。
上にボールを投げて、これをラケットで…。
すかっ。
「あれ?」
「うはッ!」
日和が笑ってる。
「下手だなぁ。お前。やったことないのかよ」
「やったことあるわけないじゃん」
日和、コートに侵入。なんか嫌な予感がするぞ。
「俺が教えてやるよ、こうやって」
って俺の背後からぴったりくっ付いて手を持つ。男子ギャラリーから「おい、てめぇ何やってんだよ」ってブーイング。テニス部部員から「キャー!何やってんのよ、変態」とブーイング。
「うっせい!お前ら!俺が妹に手取り足取り教えてあげてんじゃねーか!兄弟愛だよ!」
兄弟愛ねぇ…。
それから日和は俺の太ももを触って、「もちっと足は広げたほうがいい。くぱぁって感じに」。それからお腹を触って「おなかは引っ込めたほうがいい」。それから胸を触って「でかいなぁ…」
って、おい!
ブーイングの嵐のなかでここまでやる奴も珍しい。