20 ゾロ目の宿命を背負う男 1

クリさんが経営する何でも屋にはたまに変な客が訪れる。
普通はそういう変な客は相手にしないでつきかえすものだけれど、クリさんは一味も二味も違う。つきかえすどころか招き入れるんだ。決して母性本能が働いてるわけじゃないよ、決してだよ。興味本位というのがその実。だからたまにしか変な客が来ていないはずなのに、いつも変な客が着ているような感覚にさえ陥ってしまう。
ほら、今日も変な客が来てしまった。
その客は普通にサラリーマンな感じのスーツをキメてて頭の毛はちょっと薄くて、顔は…なんていうんだろう、印象が特に無い顔だな。別にブサイクというわけじゃないしカッコいいというわけでもないし。そう、ブサイクだとかかっこいい人ってインパクトがあるから印象に残るんだよ。でもこの人は全然残んないなぁ。メガネ外せば少しはましになるのに、これが更に印象を薄くしている。年齢は60歳いくかいかないか…。
で、その収入だとか困らなくて社会的地位もそれなりにあって、もしかしたら家庭も築いているかも知れない人間が、ちょっと困った顔をして俯いてこのボロアパートに来るもんだから、その時点でクリさんの興味の目はその男に注がれたわけだよ。
男はボロアパートの前をウロウロとしてた。多分「このクソ汚いアパートが本当に何でも屋がある場所なのか?本当にこのボロアパートであってるのか?」なんて思いながら。そしてクリさんと目が合って、
「何でも屋を探してるのか?ここだ」
と呼び掛けられて、
「え?ああ、やっぱりそうなんだ…」
男はギィーギィーいってるボロい階段を登ってきた。
そして部屋に入ってきた。
「えっと、高橋と申します。ここがコンピュータ関係の何でも屋と聞いたのですが、よろしかったでしょうか?」
「うむ。立ち話もなんだから上がってくれ。まぁ遠慮はするな」
相変わらずお客さんに対する物言いも随分とエラそうだなぁ。RPGでいうところのどこかの国の王様的な役割みたい。客を客として扱わないような態度のクリさんにちょっと引きながらも、そのサラリーマン風の男は僕とクリさんの後に続いて狭い部屋の中へと入っていく。