21 愛のエプロン料理王決定戦 16

「さて、ナオ選手、北川さんの為に一体何を作るのでしょう?」
何を作るって、何が好きなのかもわかんないのに。無難なものを作っておこうかな。でもこんなアイドル崩れに嫌味な女の人の為に何かを作ってあげるのも嫌だなぁ。
「えっと、ハンバーグとか」
とかを司会者に答えてたら、遠くの方で
「えー!やだぁ!」
とか言っちゃってる自称アイドルの、えっと、誰だっけ。南川さん?とにかくその自称アイドルの奴がさ、机をパンパン叩きながらヤダヤダ言ってるんだよ、その辺りにライフルが転がっていたら迷わず頭を撃ちぬいてやろうかと思うぐらいに腹が立ったねーっ。
「あたしタコライスが食べたい!」
はぁぁ?タコが好きなのか。
タコライスって、タコが入ってるごはんですか?」
と僕が聞くと、
「そうだよ!知らないの?タコとかエビとかが入ってるチャーハンだよ!エビせんべいと一緒に食べるんだよ!」
もう勝手に食べればいいじゃん…。と僕が思うよりも早く会場の僕のファンらしき人達がヤジを飛ばし始めた。
「てめぇで勝手に食べてればいいだろうが!」「タコライスのタコは蛸の事じゃねーよ!情弱が!」「誰も知らないような料理の名前を出して気を引こうとして痛い事になっちゃったな、寒すぎるんだよ!」「引っ込めブサイクが!」「タコ!」「だからいつまでたっても自称アイドルのなんだよ!えっと、名前なんていうんだっけ、北、北…南だっけ?東か。東が!」
すっごいヤジだ。僕だったらすぐに立ち去って家に帰ってから録画しておいたアニメを見ながら言われたヤジを一つ一つネットにばらまいたりしながらウサを晴らすだろうけど、これでメゲないのが本当のアイドルなんだろうか。いや、きっと頭が『アイドル』になってるんじゃないのかな。そうに違いないよ。平気そうな顔してるじゃん、自称アイドルの…えっとなんだっけ。名前が全然覚えれないんだよな、どこにでもあるような単純で適当な名前だからだよ。ったく、アイドルならもっと覚えてもらいやすい名前にすりゃいいのにさ。
あ、やっぱり全然答えてないみたいだ。顔真っ赤にしながら審査員席を降りてきて…うわぁ。僕今はじめてこの人の頭からつま先までをまじまじと見たけどオ、顔は普通なんだからせめてルックスだけでもいいのかと思ったけど、普通の(あと少ししたらおばちゃんになりそうな感じの)人じゃないか。
「お、北川審査員。どうしたのでしょうか?」
あ、そうそう。北川っていう名前だった。
「私もつくる」
「え?」
「え?」
僕と審査員はこの自称アイドルの…えっと、なんだっけ。西川だっけ。そう、西川って自称アイドルの女の突然の発言に頭の中が「?」マークで埋まることとなったんだ。私もつくる?何を?タコライスタコライスのタコは蛸のことじゃねーよ!って言われたのにまだ作るきなのか。
「えっと、何を作るのでしょう?」
タコライス
…マジですか。