21 愛のエプロン料理王決定戦 17

それじゃあ、まず最初は…えっと、食材を選ぶところからかな。タコライスなんだからタコを取ってこないと。と、僕が自称アイドルの南川さんのほうを見てみると、どうやらタコと格闘中だった。
「ちょっ、やだ!なにこれ!キモーイ!!」
なんて事を言えるのはそれなりに男性に人気のある人なんだけど、自称アイドルの南川さんはそれを『言えば』男性ウケがあるのだと勝手に勘違いしちゃってる。まずルックス前提なのに。ヤバイ、ヤバいよ…そろそろワナワナと震え始めちゃってる私のファンクラブの人達の目が殺気立って来た。
「キモイのはてめぇだろうが!」「引っ込めブタ!」「全然可愛くねーんだよ!」「お前タコ普段から生きたまんま食ってるだろうが!」「何今更カワイコぶってんだよばーか!」「消えろおばちゃん体型!」
ヤジ怖ェェ…。
「おばちゃん体型とか言った奴出て来い!」
南川さんも負け時と反撃。っていうか、何がしたいんだろこの人。男性にモテたいんじゃないの?
「ふんぬッ!」とさっきまで怖くて触れなかったようにしてたタコを一発で引っ張り上げて、まな板の上に乗っけると包丁で(不器用な感じで)生きたままぶつ切りし始めた。鬼気迫るとはまさにこれです。あのタコをファンの連中に見立てて切りまくってる。
「ほら!タコが出来たわよ!」
南川さんはタコのブツ切り状の奴をボールに入れて持ってきて言う。ボールの中ではさっきまで生きてたタコがまだちょっと動いてて、これを醤油で食べたら美味しいだろうな、粋が良くてなんて思ってしまった。
「こ、これをどうするの?」
「はぁぁ?どうするって?焼くのよ!」
焼くのか。焼くのでいいんだよね。僕は知らないよ。レシピとか調べることも可能だったけど、僕主導で何かやったらこの南川って人がいちいちうるさそうだし。というわけで僕はタコを炭火焼き網の上でじゅうじゅうと焼きながら南川さんが次に何をするのかを見ていた。
タコライスだから後はごはん…だよね。
そのライスの部分を作ろうと南川さんがなにやらごはんを取ってきてフライパンの上にパラパラと巻いてる。えーっと…え?