21 愛のエプロン料理王決定戦 18

「何、やってる、の?」
僕は恐る恐る南川さんがじっと見つめるフライパンを横目で見ながら聞いてみた。なにやら真剣なまなざしでフライパンの上に撒いたごはんを見つめているんだ。これは、何かの儀式なのかな。
「焼いてるんだよ!」
「ごはん焼いてるの?」
「うん」
「チャーハンとかって、お米を炊いてから入れるんじゃないっけ…?」
「え?」
いま「え?」って言ったような気がする。いや、言った。凄い早口で小声で聞こえるか聞こえないかわかんないぐらいで「え?」って言った!
「別に焼いたっていいんじゃないの?」
「え…」
いま「え…」と僕は思わず言ってしまった。僕とて普段からマッシュポテトしか作らないから何が正しいのかはよく分からない。ネットで検索すれば山の様に抽出される料理レシピの一つ一つは実際に作ってみないことには美味しいのかどうかとか、作れるのかどうかとか、むしろ食べれるのかどうかもわかんないだろうけども、僕はフライパンの上でなにやらちょっと煙を出し始めているごはん粒達を見てると、じゃあタコライスってそうやって煙が出た後の奴を僕たちは口に入れていた事になるわけで、ほら、ちょっと焦げて黒くなってるごはん粒とかは僕が口に入れるまでにどこかの工程で焦げを落とす作業があるのかな、とか考えてしまうわけで。
「そろそろタコを入れて」
僕はそう言われるまま、香ばしく焼き上がっている炭火焼タコをフライパンの中に放り込んだ。それをちょっと焦げ臭い煙を放ちながらも、ごはんとともに焼いていく。いや、炒めていくのかな。まてよ、煙が出ているからこれは焼いてるんだよね。
「できたわ!」
僕を審査する予定だった自称アイドルの多分南川さんは、何故か僕の手伝いをしてタコライスを完成させてしまった。どう考えても焦げてるそのタコライスをニコニコとしながら自分の審査員席まで運んでいった。そして席にすわて一言、
「うっ。くっせ…」
…もっと早く気づきなよ。