21 愛のエプロン料理王決定戦 19

さて…ついに僕の審査の時がきた。
正確には僕と自称アイドルの…えっと、自称アイドルの女との合作を、審査員である自称アイドルが食べて評価する。なんだか意味がわからないぞ。僕が評価されるのか?それとも合作が評価されるのか?僕は作る最中に自称アイドルの…えっと、名前がマジで思い出せないんだよね。この人の名前って田中とか佐藤とかぐらいに日本ではメジャーすぎてどうでも良くなってくるんだよ。もう自称アイドルでいいんじゃないかな。いやちょっと長いな。「ジショウアイドル」長い!「ジイ」とかでいいか。そのジイが僕と料理を作っている最中に、僕がとった行動が気に入らないとかってなると評価がさがるとかいうアレかな。だとしたら僕はここでもうおしまいなわけで…。
「えぇ…これ食べるの?」
泣きそうな顔してジイが言う。って、おいおい、君も作ったよね?自分で作ったものを食べないとか、この人完璧なまでにダメ料理を作る王道を歩いているな。
さて…このコメントでまた…
「てめぇが作ったんだろが!」「くせぇとかマジ頭おかしいんじゃねーの、おまっ…」「ダメな主婦の決勝戦じゃねーんだぞ、引っ込んでろ!」「カップラーメンも作ったことないというのは本当ですか?」「消えろ」「化粧が濃いすぎ」
「てめっ!今化粧が濃いとかいった奴でてこいやこら!」といつもの調子で自称アイドルが僕のファンクラブに向かって吠えてる。化粧が濃い以外は認めてるとすら思えてしまうよ。
「一応審査員なので食べてもらわないと困りますね」
さすが司会者。しっかりとまとめた。
「うぇぇぇ…」
そんなに嫌がる事はないじゃん。タコとチャーハンでしょ?匂いとかも別に…うっ。くっせッ…。
くせぇぇ…。
何この…磯の香りが腐ったような香り。
「うっうっうっうっ」
なんか食べるタイミングを見計らっているみたいだ。目をつぶって顔中汗だらけでほっぺたを真っ赤にして、プルプルと震える手でスプーンを持って、タコ(なんか緑の液体が出ている)とパサパサのご飯を口の中に…。あ、スプーンを置いた。
「食えるかよこんなもん!ばーかばーか!」
一斉にスタッフ、マネージャーと思しき人、僕のファンクラブの人達がそのジイの元へと集まってきて羽交い締めにした。
「ちょっ!はなせこら!てめっ!はなせおらぁぁぁ!」
暴れまくるジイ。
だが抵抗むなしく、口の中にタコとパサパサのご飯を放り込まれた。
「んん!んん!んん!んん!んん!んん!んん!んおおおおおおお!おおおおううううえええええ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛えええええ!」
まるで宇宙人に寄生された人間の口から孵化した宇宙人の幼虫が這い出るかのように黄色のドロドロとしたものが一気にフロアにまき散らされる。
「ちょっ!きめぇ!」「ぎゃああああああああああああああああああ!」「うわ、服についた!」「服が溶けてる!」「た、助けて!臭い!」「おおお!おおおおううううえええええ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛えええええ!」
…僕の審査はゲロの中で終わった。
採点不可能。
採点する人がリタイアしたからさ…。