21 愛のエプロン料理王決定戦 20

次はユキの審査の番。
ユキは今までの点数が低いせいで例えここで満点を取ったとしても残念ながら優勝はないんだ…でも上位ランクインするからユキが望んだ賞品(ケルベロスの首輪)は手に入れる事は出来るかもしれない。
「さて、ユキ選手は審査員の為に一体何を作ってあげるのでしょうか?」
と司会者は聞くけども、実はもうそのあたりも事前にネゴしているんだよね。網本の好みは肉じゃが。
「俺の好きな料理の一つを教えてやろうか!肉じゃがだ!ちゃんと愛を込めてつくるんだぞ?」というやり取りがさっき廊下で行われていた。まぁ審査員が身内だとわかっているから出来ることなんだけどね。
事前に教えられていたからか、それとも最初っから作り方を知っていたのか、ユキは淡々と肉じゃがっぽいのを作っていった。実は僕はユキと同じアパートに住みながらも彼女が料理をしている様子は見たことがない。様子というか、普通、一緒に暮らしていれば何かを作っていれば部屋から香りが漂ってくるはずだけども、そういうのが今まで一度も無かったからね。料理なんて全然駄目なんだと思っていた。
3人の中で今までで一番まともに料理を作る様を見せつけられて、網本でさえも「へぇ、うまそうだな」なんて小声で言っていたりする。ぶーちゃんに至っては自分の番になるのを待ち望んで苦痛の表情を浮かべるほどだった。
ようやく仕上がったみたいだ。
どこからどう見ても、とても美味しそうな肉じゃがだ。あぁ、僕もお腹空いてきたなぁ…。