21 愛のエプロン料理王決定戦 21

「うわぁぁ…美味しそうですねぇ」
司会者も色々と料理を見てきてお腹がすいちゃってるのかな。ユキの肉じゃがを見て食べたそうな顔をしている。
「別に網本以外の人も食べてもいいわ。それがルール上許されるのなら」
さすがに隣でヨダレを垂らしているぶーちゃんを見ていると、何か上げたくなるのだろう。ここでお預けをするというのもかわいそうだよ。
網本とぶーちゃんの二人が食べることになった。
ユキがお皿に肉じゃがを盛っていくと会場からため息。料理番組でありがちな「あぁ〜美味しそう」ってのを盛り上げるための、まさにあのため息が響いた。凄いな。
「ふむ、うまいなこれ」と網本。
「んぐんぐ、はぐはぐ、むぐもぐ」と無心で食べるぶーちゃん。
それに反応するかのように「あぁ〜」というため息がまた出る。1回戦目、2回戦目と悪い印象を会場の人達に与えていたユキが意外にも料理がうまいというギャップも手伝って余計に高い評価を貰っているみたいだ。
司会者がユキにコメントを貰おうとマイクを近づける。
「さて、とても好評なのですが、この料理には何か隠し味でもあるんでしょうかね?やはり隠し味は『愛』ですか?」
なんだよそれ、僕の時にはそんなコメントなかったぞ…臭い臭いと言われて評価すらされなかったのに、くっそ。
「隠し味?普通に作っただけよ。あぁ、そうね。ひとつだけ…隠し味じゃないけどオマジナイをしているわ」
「マジナイ…?」
「愛を込めた料理を作るのが目標なんでしょう?東洋の呪術では相手に気持ちを伝える時、料理の中に自らの身体の一部を入れて調理するのよ。愛を込めるということだから愛に一番近い部分…陰毛を入れてみたわ」
「…」
司会者と会場がシーンとなる。
さっきまでガツガツと食べていたぶーちゃんと網本の手が止まる。
まるで空気が凍りついたみたいな状態になった。
「おおおおおおおおおおおうううううううううううううううううううえええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
網本とぶーちゃんは今まで食べたユキの要理と他の人の料理と多分昼食だとかを一気に皿の中に吐き出した…。
「おおおおおおおおおおおうううううううううううううううううううえええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
会場からもそんな嘔吐音が響く。
司会者は口を抑えて顔を青くしている。
「救急車!早く救急車を!」
スタッフのほうからそんな声が聞こえて、ユキの料理を食べた二人はそのまま担架で運ばれていった。会場にいた人も数名がハンカチで口を抑えながら外へと出て行った。
まるでテロだ…。