21 愛のエプロン料理王決定戦 22

僕もユキも採点不可…。
ユキだけが唯一の望みだったのに…。もうおしまいだ!あぁ!くっそー!僕のフィギュアが手に入らないことだけが完全に確定してしまったよ!だいたい他の参加者でフィビュア欲しい人なんていないでしょ!どうせもらったらオークションで売るんでしょ!そういう奴がいるから僕みたいに本当に欲しい人に行き渡らないんだよ!しかも価値が下がらないように連中は買ったフィギュアが売れなかったら捨てるそうじゃないか!そう考えると今回の参加者全員が敵にみえてきたよ。敵って言ってもこの愛のエプロン料理王決定戦の中だけの話じゃない。日本のアニメオタク達にとっての敵だ!もう参加者ひとりずつ全員をマークしてネットに個人情報ばらまいてやろうかな…。
…あと残っているのはクリさん。しかも身内が審判じゃない。それだけじゃない、よりにもよって料理評論家の人だ。名前なんていうんだっけ。まぁ名前なんてどうでもいいか。料理評論家を相手にどうやって一般人が「舌を唸らせる」料理で勝負するんだよ。まぁ、他の審査を受けてない選手も残念ながら全員料理評論家に審査されるわけだからザマァないけどね。
審査員は料理評論家一人。司会者が一人。会場の人も殆ど残っていない。
静まり返った会場ではクリさんが料理をする音が響いていた。
何を作っているのか気になって見ていた。
材料は鳥のモモ肉、もやし、キャベツ。んん…あんまり高価な材料じゃないな。鳥のモモ肉だってそこらのスーパーで売っているものみたいだし。それに醤油とバターなどをベースにしたタレを作ってグツグツと煮ている。なんの料理だろう?でも、なんの料理にしても料理評論家を喜ばせるような料理とはとても思えない。作り方はそれほど手が込んでいるわけでもない、材料だって安いし…家庭料理なのかな?
完成した料理を見て僕は落胆しちゃった。
青い色をした安っぽい皿の上に鳥のモモ肉、もやしを炒めたもの、キャベツを刻んだものにドレッシングがちょっとかけてある。それに味噌汁とご飯。しかも僕はさっき作る所を見てたけどさ、味噌汁がインスタントなんだよ。
クリさん…やばいよ。バカにするにも程があるよ…。
「えと…完成…でしょうか?」
恐る恐る司会者が聞く。
「完成だ。まだ暖かいうちに食べて欲しい」
クリさんは料理評論家の席にその安っぽい皿を安っぽいお盆の上に載せたまま置いた。