1 廃村

山口県新南陽市金剛山と呼ばれる山がある。
つい最近、この山をどっかのゴルフ場の社長が買って頂上付近に大仏を建てただとかなんとか。金剛山のふもとには湧き水が出る場所があり、新南陽市内から喫茶店の関係者が美味しいコーヒーの元となる湧き水を求めてポリタンクを持って来ては運んでいたのを何度か見た事がある。少し神聖化はしているものの、どこにでもある山ではある。登山者も多く居て、土日はグループで登山を楽しむ会などが開かれたりもする。
今日、俺こと『白崎勇』と『宮元太一』、そして『常盤みのり』の3人は、この金剛山へと登山をしていた。
宮元は大学からの友達の一人だ。あとで詳しく話すが、宮元とは大学時代にとあるサークルで人生のうちの8割の楽しい経験を味わった。では残りの2割しか楽しい経験が無いつまらない人生かと言えばまさにそれで、俺は久しぶりに宮元が誘ってくれたお陰で、この陰鬱とした毎日から開放されたかのような気がしていたのだ。つまるところ、ほんの少しだけ大学時代に戻った気がしていた。
宮元は自分は高校大事にワンダーフォーゲル部だったから、などと前置きをしていたが、社会人になってからは市役所勤め、身体を動かす事とは殆ど無縁な仕事だ、体力の衰えは傍にいる俺にも十分に伝わってきた。とはいいつつも、俺も彼とあまり変わりはしない。仕事とっても人に誇れるような仕事ではない。工場で流れ作業をするその歯車のひとつなのだ。身体と言っても、肩からさきだけしか動かさない。
そして俺の後ろにいるのが『常盤みのり』。俺以上にぜぇぜぇと息を切らしながら歩く彼女も俺と同じく流れ作業員である。俺と違って車の部品工場勤めではない。彼女は仕事を転々としていてコンビニの店員を辞めたあとはどこかの食料品を扱う会社の工場で皿の上にタンポポをのせる仕事をしているらしい。
俺達3人が金剛山を登山している理由は他の登山客とは異なる。頂上にあるどこかのゴルフ場の社長が立てた仏像を拝みに来たわけでもないし、初夏の夏の木々の生命力を肌で感じ取るために来たわけでもない。宮元はこの金剛山の登山中の道から脇にそれる道を進めば『失われた山村』があると言った。インターネットにもそんな情報は載っていないから、本当かどうかはわからないのだが、無類の廃墟好きな宮元がカメラやらビデオを片手にその山村を写真や映像に収めると意気込んでいるのは事実だ。
まるで子供の様に獣道を突き進む宮元。その先には彼が好きな廃墟が待っているのだから仕方が無いといえばそうなのだが、少しは俺とみのりのペース配分も考えて欲しいものだ。こちとら、みのりも含めて高校時代は帰宅部、大学でやっていたサークルだって運動とは無縁なのだ。ワンダーフォーゲル部には負けるよ。負けを認めたから、そうやって体力自慢をする事もないだろう。
「おい、宮元、休憩しようぜ」
「また休憩か。何度目だ。社員旅行でおっさんどもがトイレ休憩をするけどな、あれは最初にトイレ休憩をしたらな、それから止めどなく2度目、3度目のトイレ休憩を余儀なくされるぞ。それこそ15分おきぐらいにな。次のサービスエリアまで30分の時なんて冷や汗ものだったよ。漏らす漏らすってわめいて、結局高速道路の退避エリアに車を停めてそこで用を済ませたよ」
「おっさんのトイレが近いのと俺とみのりが休憩したがってるのを混在しないでくれ。体力的には限界なんだよ、ここ4、5年、まともに身体を動かした事がないんだから」
宮元はしぶしぶ傍の切り株に腰を落とした。俺もみのりもそれにあわせた。周囲のことなど気にもとめなかったよ。みのりなんて、傍の枯葉の上に腰をそのまま降ろしたのだ。山のぼりを開始した直後はちゃんと座敷をしたに敷いたものなんだが。
「この調子じゃ山村につくのは夜になるな。俺は心霊スポットめぐりの為に山登りをしてるんじゃないんだぞ。フラッシュだってろくに装備してきてないのに」
宮元が休憩に対する嫌味を言う。
「お前が途中で道を間違えた事も忘れるなよ」
「そりゃ計算済みだよ。でもお前とその彼女が予想以上にペースが遅くて」
「お前が早すぎなんだよ。それに自分だって随分息が上がってきてるじゃないか」
二人のやり取りを聞いていたみのりはやり切れずに一言、
「ごめん…」
「いいよ、誤らなくても。俺だってみのりと同じぐらいの体力だしさ」
と俺はフォローする。
まだ疲れは全然取れていないのだが、早速にも宮元は立ち上がってリュックなどを背負い始めるのだ。
「もう?早すぎだろ」
「お前らはもう山を降りろ。俺は俺のペースで山村にいくからさ。それでも夕方にはなると思うけど、そこで写真を2、3枚収めたら帰るよ。お前ら待ってたら獣道の傍で野宿して、明日の昼に山村に到着しそうだ。悪いけどその頃は俺は仕事にいっていなきゃならん」
宮元の言う山村がどの位置にあるのかは彼が持っているGPS機能付きの携帯で解るのだが、確かに結構な距離だ。さすがに獣道の傍で野宿は言いすぎだが、今のペースでは山村とやらにつく頃には日付変更を終えそうなのだ。俺もみのりも、嫌味と知りながらもしぶしぶその案を受け入れることにした。その日はハイキングが少し出来ただけでよかった、などと考える事にして、来た道を引き返した。
宮元の読みは当たっていて俺達が山を降りる頃には日が暮れてきた。宮元のあのペースとGPS機能付き携帯で見せてくれた地図の距離を考慮するとそろそろ例の失われた山村に到着してる頃だ。山に入る頃にはセミの声が会話もかき消さんばかりに鳴り響いていたのだが、今では周囲にはそれに代わってひぐらしの鳴き声が聞こえてきて、夏の夕方を思わせる独特の寂しさがじんわりと周囲を包んできた。
バス停にバスが周回するのは1時間おきぐらいなのだが、タイミングよく俺達が下山してバス停に付いた1分ぐらい後にバスが訪れた。宮元がこのバス停に戻ってくるのは夜ぐらいになるだろうから、奴はタクシーでも呼んで帰らんといかんな、などと考えながら、俺とみのりはバスに乗った。
周囲は田んぼばかり。ひぐらしの鳴き声は山のほうからしつこく聞こえる。しばらく進むと床屋やスーパーなどがちらほら見え初めてようやく歩道に人が見え始める。夕方のラッシュ時間となっていた。そしてバスは新南陽駅を経由してから隣街の徳山駅に着く。俺達はそこからまたバスに乗って周南緑地公園傍で降りた。そこに友達が勤めているハンバーグ専門店があるのだ。
カランコロンと安っぽい鐘の音が鳴って、俺達が店に来た事を店員に知らせる。適当な二人テーブルに腰を降ろすと、厨房から知った顔が現れた。
「おう、お久しぶり」
「お久しぶり。一ヶ月ぶり?」
「それくらいかなぁ。今日は何にしますか?」
コックの格好をしたその男は俺の高校時代の友達の一人だ。今日は何にしますか、などと注文するときだけは丁寧語になるみたいだ。定期的にこの店を訪れる俺とみのりに配慮して、売れ残った食材をメインにして安く仕上げてくれる。値段的には昼のコースと大差ないのだが、ボリュームは多くなる。貧乏な俺とみのりにとってはその配慮は嬉しかった。
「いつもの奴で」
ちなみにいつもの奴ってのが売れ残りをメインに作る例の定食だ。
待つ事、小一時間程度。もっさりとした野菜が沢山乗っかっているステーキの鉄板を持ってくる俺の友達。あの野菜の下に肉が詰まっているのだろう。という事は売れ残りは野菜なのかな。ジュウジュウと音が立っているところに、一緒に持ってきてたタレをかけて更に大きな音を出させる。その美味しそうな臭いが食欲を奮い立たせ、さぁ食べようかってタイミングで友達は俺に言うのだ。
「今日は二人でデート?どっかの山にでも登るような装備だけど」
「デートじゃあないな。俺の大学時代の友達とね、山登りだよ」
「この辺りの山っていったら大華山かな?」
徳山に住んでる奴なら山と言えばそっちのほうを思い浮かべるのか。瀬戸内海国立公園に指定されている、徳山湾に突き出た半島にある山が大華山。そこもいろいろと曰くつきではあるけど、宮元の興味をそそるような物件がないので却下となっている。正確には『今は』無い。以前はそれらしいのがあったという話だ。
「そっちじゃないよ。金剛山のほう」
「あぁ…そっちか。あのどっかの金持ちが仏像を山のてっぺんに建てたとこでしょ。夜はその仏像がライトアップされて名所になってるよな。まぁ、個人所有だから立ち入り禁止になってるけど。んで、仏像拝みに行ったってわけか」
みのりは友達の相手を俺がしてるのを良い事に、さっそくキャベツやらニンジンの千切りやらの野菜を掻き分けて奥深くに眠っている肉を箸で引っ張りだして食べている。食事のペースを落としながら俺が友達の相手をしなければならん。
「まぁ、そうなんだけどな。途中でくたばって降りたよ」
そこで否定するべきなんだが俺もみのりもスルーした。仏像を拝みに行ったって事にでもしないと、まさか廃村を見に行ったなんて言えば俺が嫌な目で見られるに違いないからな。廃屋探索って言えば聞こえは少しだけ良いけど、所有者の決まっている廃屋なんてのを探索する輩、いわゆる不法侵入をやる輩とそれらは混合されてるからな。
「その、大学時代の友達は一緒に呼ばなかったのか」
これはいつもコイツが言う台詞の中に含まれている台詞だ。何かしらの理由をつけては俺の友達やら、酷いときはその友達の友達やらも「呼ばないのか?」などと言ってくる。客寄せに必死なんだとは思うが、露骨過ぎるのもアレだ。
「まだ山登りを続けるってさ。夕方まで山で写真をいくつか撮ってから、夕闇の中を降りる事になるんだろう」
「へぇ…また随分と怖い事をするな」
と、ここで黙々と食べていたみのりが口を挟むのだ。
「怖い事って?」
みのりは昔から霊感みたいなのがある、などと自分から言ってた。霊感って言っても彼女が定義するその言葉と俺が定義する言葉とは意味が少し違う。みのりの場合は「何か嫌な感じがする」ってのを霊感だと言ってるのだ。俺からすれば嫌な感じを感じ取れるのなら俺だってそうだ。そういう軽々しいもんじゃなくて幽霊とかが見えたりするのが霊感だと思うんだがね。ただの『恐れ』なんだと思うのだが、結局、自分が今まで普通に歩いていた場所だとかで何か『曰く』付きがあるのなら望んでそれを聞いて、その場所を避けようとするのだ。この前もどっかの国道で献花されてたら、その場所から必死に目を逸らしてたし。
「いや、どっかで聞いたけど、その山の下をトンネル開通させたら、トンネル内やらその近辺の道路でありえないぐらいの数の事故やら車の故障が頻繁に起きるようになったって。ほら、徳山ICの電工掲示板でしょっちゅう『故障車有り』だとか『事故車有り』だとか『通行止め』ってなってるじゃん。確か金剛山だったと思う」
「そりゃ、あれか、バチが当たったとかそういうのかな?」
「それはわからんよ。ただそういう事が頻繁に起きるってだけだよ」
軽く寒気を覚える『前』に、そもそも俺達が上った金剛山の下の位置に山陽自動車道のトンネルがあったかどうか考えていた。もしそうなら、その故障とやらを引き起こす原因は解らないにしても、何かがあるって事で話の筋は通ってるのだから。バスで金剛山の下の国道を通るときに、確かに山陽自動車道の高架橋下を通過した気がする。でも位置的には微妙だなぁ。別の山の下を通ってるんじゃないのか?仮に金剛山の下をトンネルが通ってるとしよう、山の入り口付近に住宅があるんだけれど、それも全部トンネルの上にある事になる。ちょっと眉唾話だな。
「んじゃ、俺はそろそろ仕事に戻るわ」
と言って友達は厨房へと戻っていく。仕事っつっても客は俺とみのりだけなんだが、一体何を作るってんだろう?下ごしらえか。
それから俺とみのりはぼちぼちと話をしながらも、黙々と野菜大盛りのステーキを平らげて、そして家に帰った。俺の家は新南陽市の街中にある小さなアパート。みのりは同じく新南陽だが、少し徳山方面より、同じく小さなアパートだ。二人は新南陽駅で別れて、そして最後の残ったわずかな体力を頼りに歩いてアパートまで帰った。
さて、今日は嫌というほどに足を動かしたわけだが、こういう時は決まって筋肉痛が襲って後、朝の早い時間で足が痙攣を起こして飛び起きるのだ。『こむらがえり』って奴だっけ?起きるとわかっていて何かしようにもせいぜいシップを貼ったり風呂で揉んだりするのが精一杯だけど。
俺はみのりが無事家に着いたかどうかなどを携帯に電話をして確認してから、急激に襲ってきた眠気に任せて眠る事となった。ふと宮元はちゃんと家に帰ったのだろうか、とも考えたのだが頭のどこかで『男の子だから大丈夫だろう』っていうのがあるのか、それは建前で結局は眠りたかっただけなのか、俺はそのまま眠りについた。
それから、翌朝の事になるのだが、俺はこの時ほど普段起きてる『こむらがえり』などや筋肉痛が愛おしく思えた事がないってぐらいの経験をした。
多分、朝だろうと思う。カーテンに日の光が差し込んでいるからだ。けれども、視界ははっきりとしておらず、まるで夢かその中間とも言うべきものだ。時折金縛りに会う事があった。それはレム睡眠とノンレム睡眠のタイミングがズレる事によって起きるという原理は知っていたから、普段はそれほど怖くは無かったのだ。その時も最初は「またか」などと思いながら、身体を動かして金縛りを解除しようとしていた。
だが、違和感を覚えた。
何かが足に感触がある。
手の感触だ。手が俺の足首を掴んでいるのだ。
学生時代に友達が修学旅行でふざけて俺の足首を掴んだ事があった。もし俺の部屋にたまたま、みのりが来ていて、もちろん、彼女はそんな悪ふざけをするような性格じゃないが、その悪ふざけをしたのだったら俺は少し怒りながらも、みのりに文句を言ったものだ。そうであって欲しいとどれだけ思った事か。
(離せ!離せ!クソ!離せ!)
心の中で泣き出しそうなぐらいに叫ぶ俺。だが、その手は意思があって、俺が暴れれば暴れるほどに力を込めてくるのが解る。つまり、ただ握っているだけなら何か別のもの、例えばタオルだとかが、巻きついているのを俺が勘違いしている可能性があったのだが、力を込めてきたときに、何かがいるという確証が与えられてしまったのだ。
そんなやり取りをしばらく続けていたら突然身体が動いた。いつもの金縛りが解除されたときの感覚に似ていた。だが俺はとっさにその手があった空間に蹴りを入れた。そうでもしなければ手を離した何かが再び俺に襲い掛かってくる可能性があったからだ。だが、空間を虚しく俺の蹴りが切った。
朝だと思っていた。
だがカーテンから差し込んでいたと思われた光は無い。今何時だ?時計を見る。時計は深夜2時30分を指している。なんだったんだ?夢?俺は寒気が身体を襲い始めるのが解った。足を何かが掴んでいた。そんな夢だった。
俺がその掴んでいた足首部分に目を向けようとした瞬間、心臓が止まるかと思うほどに、その嫌なタイミングで携帯が鳴り始めやがった。深夜2時だぞ?ワン切野郎か?だが、携帯は鳴り続けている。そうか…宮元か。俺はふと宮元の顔が浮かんだのだ。この時間まで山に居たのだろうか、などと思いながら。だが、携帯の着信の所に表示されている電話番号は全然しらない番号だ。番号の形態からすると自宅か電話ボックスっぽい。
「はい、白崎です」
電話の向こうからは女性の声。年齢は50才かもっと上ぐらいだ。
「あの、私、宮元太一の母ですが、」
俺はその時点で、強烈な寒気に襲われた。それは幽霊云々のものとは違う、もっと現実的な寒気だ。宮元の母親から俺に電話が掛かってきた時点で、宮元が家に戻ってきていないという事を意味しているのだ。案の定、電話の内容はそういったものだった。
「とりあえず、警察かどこかに連絡を…捜索してくれると思うので」
太一の母親も十分に慌てていたと思う。でも俺も十分に慌てていた。警察に連絡って?消防署じゃないか、捜索するのは…。などと言った後で気づいた。
「すいません、消防署ですね」
「え、ええ、連絡してみます」
電話が終わった後、俺は今の状況を誰かに伝えたくて、登山に同行したみのりに、深夜に電話を掛けるのは失礼と思いながらもかけてみた。だが以外にもあっさりと電話に出たのだ。起きていたのか?
「ゆうくん?」
「起きてたのか」
「い、今ね、嫌な夢みて飛び起きたところ」
「それより大変なんだよ」
「え、もしかして、宮元くんに何かあったの?」
俺は耳を疑った。俺はまだ何も話していない。どんどん寒気が強くなる。本当に寒気を感じる時は冬だろうが夏だろうが、たとえサウナに入っていたとしても背中の中心から冷えてくるのだ。逃げ場の無い寒気が。
「え、みのりのとこにも電話あった?」
「電話はゆうくんから来たのが最初…だけど」
「なんで宮元の事だって解ったの?」
「いや、さっき夢の中で宮元くんが出てて」
どんどん寒気が強くなる。
「それでね、宮元くんの足が無くなるの、切れるの」
「マジか…いやさ、さっき宮元のお母さんから電話が来て、まだ家に帰ってないって」
「え、なにそれ…」
足?足が切れるって?俺はとっさに、俺が体験した金縛りの事が浮かんだ。そう、足。足はどうなってる?俺は足首をみた。
手形が残っている!
「うわあああああああああああああ!」
俺はパニックになり、電話越しに叫んでしまった。
「ゆうくん、どうしたの?!なに?どうしたのよ!」
「足に手形が残ってる!手形が!」
とっさに部屋の明かりをつける。周囲を見渡す。何も居ない。ただ、寒気は消えない。俺は急いで着替えて部屋を後にした。一瞬でもいいのでこの部屋に長居はしたくないのだ。まだ何かがいるのだと、俺の妄想を恐怖が支配するからだ。
電話を持ったままで俺は部屋を飛び出した。近くに24時間開いているファミレスがある。そこに人がいるだろう。ただ誰かがいるところが安心できる。電話の向こうでは、わけがわからず泣き出しているみのりの声が聞こえた。
「ジョイフルに行くよ」
少し落ち着いた俺は歩きながら電話の向こうにそう言った。
「あたしもそっち行くから。あのジョイフルだよね、近所の」
「うん」
とにかく、誰かがいるところで過ごしたかった。