25 貧乏人はサラダバーで腹を満たしてステーキが食べれなくなる

夏休みに入ってからもあいも変わらず学校には行っていた。
帰宅部じゃないかって?ノーノーノー、『科学部』です。
片山の家に行こうと思ってたけど家には親も妹もいるだろうし、じゃあ俺の家に来てって事になるとアパートで一人暮らししてて、アニメオタクな部屋を片山に見せるわけにはいかない。部活はそういう二人が出会える口実にもなっていた。
部活の前にはシャワーも浴びてきて、特にマンコとかは綺麗に綺麗にして、それで歯も磨いてきて、まるで風俗に行く前のように清潔にしてから出発した。片山も同様だ。そして部室についてからは『はじめまして』のキスに始まって、『今日もよろしく』のキス、そして『では始めましょうか』とキスをして、片山のチンコを服の上からニギニギしたり、俺は俺で片山の手をスカートの中に通して、パンツの上からマンスジをスルスル触ってもらったり。もちろんクーラーなんてないもんだから、お互いが少しだけ汗を掻きながら次第に愛撫もエスカレートしていって、最終的にはセックスをする。
今さらだがもう『セックス部』にでも名前を変えてやろうかっていうぐらいに、夏休みに入ってから毎日のようにいやらしい事をしてる俺達であった。
だがそればっかりしてるのも飽きてくる。やっぱり恋人同士なんだから、デートもしてるのだが、そろそろ学生っぽいデートも飽きてきたところだ。特に30歳の俺からすれば、映画やボーリング、ビリヤードにパチンコ、インターネットカフェやら本屋、それからパソコンショップにアニメショップと、そろそろそんな子供っぽいところじゃなくて、大人が入るお店に行ってみたくなったのだ。
そして片山に提案したのが『高級ホテルで夕食』というアメリカの映画にあるようなシチュエーションなのだ。大人だろ?え?そんなのラブホテルでルームサービスでも頼んでろクソ野郎?ノーノーノー。ラブホテルの安っぽい雰囲気では俺の欲求は満たされないのだよ。俺が望んでるのはあくまでも『アメリカの映画の1シーン』だ。ホテルのレストランも、バーも、それからダンスホールも、そしてセックス部屋も、どれ一つとして欠けてはならない。
さっそくだが、このクソ田舎の県庁所在地にある高級ホテルを予約して、俺はドレスに(魔法で)着替えて、片山にはタキシードを…と思ってたけど、そんなものは持ってないんだよ。でも親戚の人の葬式にいく時に親が無理やりスーツを買ってくれやがったので(それは入社式にも着ていくことになるが)それを着てもらうことにした。
片山はスーツで来たから、いかにもサラリーマンって感じで電車では目立ってないんだけど、俺の場合はまるでゴスロリを思わせるような派手なドレスなので(ただしあの頭につけるカチューシャみたいなのはない)電車だけでなく歩道でもタクシー内でも目立っていた。これで片山にサングラスでも掛けさせてみれば、どこのご令嬢を護衛してんの?って思われるほどだ。ちなみにこの日の衣装はワンピースタイプのドレスでスカートは普通よりもふわりと膨らんでいてレース生地が派手についてる。そして手袋、それからガーターとストッキング。ちなみにノーブラ。ブラをしてたら肩紐が見えてしまうタイプのドレスなのだ。
というわけでなんちゃってアメリカ映画の1シーンを演じる高校生二人、ホテルへ到着。さっそくロビーにいた男がこちらへ歩み寄ってきて、
「お泊りの方ですか?ご予約は?」
「小日向ですわ」
と俺はお嬢様口調で答える。まさにこれがこのドレスに似合う台詞なのだ。片山は「ぷっ」と噴出してたが。
「伺っております。お食事は最上階の展望レストランにて18時からで御座います」
あくまでもアメリカの映画の1シーンが今回の目的なのだ。まるでボディガードのように傍に寄り添っている片山は無言で渡されたチェックインの紙にすらすらとサインをする。そしてまひる『お嬢様』も、まるで芸能人がサインをするかのようにすらすらと、『ちょっと読みにくい』ぐらいの字体でサインする。それから二人はエレベーターにのる。
これを一度やってみたかったのだ。エレベーターに乗った直後に、片山の首に手を回してキス。片山はそれで何をするべきかを悟ったみたいだ。それから俺は壁を背中に押し付けるようにして、そして片山は俺の太ももをぐいっと押し上げてセックスするように腰を突き出してドレス姿の俺のアソコを下から突き上げる。もちろん挿入はしてないけど。
しかし残念、もう目的の階(俺と片山が予約してた部屋)に到着する。『ちーん』と安っぽい音がして、エレベーターのドアが開くと、その時はまだ俺は片山のあごから喉にかけて、キスをちゅっちゅしてたのだが、ドアの向こうには家族連れの一団が。30歳ぐらいの女とその旦那が唖然とした顔で俺達を見ている。そして下には5歳ぐらいの女のガキが、これまた同じように唖然と二人の姿をみてる。
そそくさとエレベーターから降りてその場を立ち去る俺と片山。背後から「ねぇママー、さっきの女の人何してたの?」とかいうデカイ声が。ふふふ。何って、君も大人になったら男にそんな事をされるようになるのさ。なんてな。
そして二人はついにホテルの部屋に入った。思ってたよりも広い。ベッドルームってのがあるし、バスルームにしても普通、トイレと風呂は同じ部屋にあるものなんだけど別々だし、風呂も二人が入れるような(ラブホテルにあるような)大きな風呂なのだ。
「このお風呂は大きいから、ふたりでここでエッチできそうだね」
などと言ってみる。
「よし、あとで風呂でエッチしようか」
と片山。
それから夕食の時間は過ぎていたので俺と片山は二人最上階へと移動する。
展望レストランはまさに夜景が見れていたら素晴らしいぐらいに大きな窓で囲まれたフロアだった。夏である今はこの時間は外もまだ明るくて映画の1シーンにあるような夜景は望めなかった。案内されたのは3人ぐらい座れる丸テーブルで、既にナイフやらフォークやらがセッティングされている。でも、なんかフロアの端によく見た光景が広がっているのだ。
そう、サラダバーである。まさかのサラダバーの登場なのだ。だってアメリカの映画の1シーンにはサラダバーなんてないじゃん、どう考えたってオカシイ。そりゃ立食パーティとかはなんかサラダバーみたいなのがあるけど、あれはサラダじゃない。
そのサラダバーでさっきの家族連れが豚みたいに皿に盛ってんのよ、豚の餌をさ。お前らそれだけ食ったらメインの料理が食えないだろう、っていうぐらいに盛ってる。しかも、母親が各サラダを1種類ずつ、多分家族みんなの為にだが、大量に皿に盛ってテーブルに運ぶ。その一方で父親もガキも、自分の好きなサラダを盛ってテーブルへ運んでる。お前らそれ食えるのかと、小一時間問いたい。問い詰めたい。
片山もそれに気づいて「うわぁ…」って感じな顔をしてる。とりあえずここで俺が一言言っておかなければ。まひる『お嬢様』が一言、
「なんですの、あれ…」
それにあわせて片山も、
「ただの豚でしょう…どこにでもいる、ただの豚ですよ、お嬢様」
俺はテーブルを挟むように設置されていた椅子を片山の近くに持ってきて、
「まぁ、見なかった事にして、コースを選びますわよ」
「うい」
コースは適当に色々と名前がつけられていたが、とりあえず一番値段の高いフルコースとやらを注文してみる事にした。ちなみに、どのコースにも『サラダバー』ってしつこく書いてあって、プラス料金を払うとサラダバーがつくらしいのだ。あの家族はたぶん、一番安いコースにサラダバーをプラスして注文したんだろうと思われる。
待機していたボーイに片山が、
「サラダバーはいらないから、普通のサラダで。このフルコースを」
「かしこまりました」
「えと、それから、飲み物は…」
「わたくしは、シャンパンを。甘口の奴を」
「じゃあ、君、このブルード・オ…なんたらを。甘口の奴」
「かしこまりました」
ボーイが去ってから、片山が口を開く。
「ここは夜景が綺麗そうだね」
「うん」
「なんか本当に映画の1シーンにいるみたいだ」
「そう?」
俺は片山の太もものところに手を置いてさすってみる。片山もそれにあわせるように、俺のスカートを少し捲って太ももの感触を楽しんでいるようだ。俺は唇を重ねようと片山の肩に自分の肩を近づける。あと少しってところで、気づいた。さっきのガキが呆然と立ちながらこっち見てやがる。ほんとマジでこのクソガキは邪魔だな。さっきあら。お前は豚みたいに食ってろよ、なんで食欲だけに収まらず性欲過多になってんだよww。俺はガキを連れ戻そうと親が近寄るときに、そのままシッシッと手でやってしまったw
んで、もう一つ、ものすごい嫌なものを見てしまった。
なんか、夕焼けの街の姿を大窓から見てる女性いて、その人ががぽつり、
「今日も下界の夕焼けは美しいわ」
この声は聞き覚えがあるんだよ。俺は凄いスピードで振り向いたね。そしたらそこには俺が『神様』と認識してる、片山にとっては学校の保健室の先生なんだが、その人がドレス姿で立ってるんだよ。なんだよ下界ってwwあ、神様だからかww神様のクソ野郎は黙って静かにレストランのフロアを後にした。
「い、今の人…」
片山も気づいたみたいだ。
「保健室の先生だね…」
「なんか変な事を…言ってなかった?」
「心の病に掛かってるらしいよ」
適当な事でごまかしといた。
さて、そうこうしてるうちにも料理が運ばれてきた。
シャンパンが入った鉄の容器、中はじゃらじゃらと氷が鳴ってる音がする。シャンパンはよく冷えたものがいいと思ってる。それは前に久しぶりに家族で(社会人になってから)墓参りをした後、イタリア料理店に寄ったんだけど、その時に出されたシャンパンが全然冷えてなかったのだ。あれは氷が入った鉄の容器の中で冷やして飲むものなのか?違うと思うんだけど…。
それからサラダだ。イタリア料理っぽいサラダだ。このサラダにはバジルだとか見慣れない野菜が入ってて好きだ。そしてこの硬くて小さく砕いたパンと、チーズ、それからシーザードレッシング、これらがとてもいい感じに味付けされてて、野菜が嫌いな人でも野菜の変な部分の味を感じさせないつくりになってるんだよね。
俺は片山のグラスにまずシャンパンを注いだ。
「ああ、ごめん」
「ん?」
「ここは男が注ぐべきだよね」
「そうだっけ?」
確かに海外だとレディーに対しての礼節として男性が女性にお酒を注ぐようなイメージがある。でも日本だと立場の弱い女性のほうから男性に対してお酒を注ぐもんじゃないっけ?社会人でいたときには会社の飲み会では女性社員が男性社員に向かってお酒をついで、その後でお返しを受けるイメージなんだけどな。
それから片山が俺のグラスにシャンパンを注いで、そして乾杯をした。
「二人のこれからの関係に、乾杯」
なんて言いながら。
うっ、意外とキツいな。このお酒。でも一方で片山は一気に飲み干してた…なんでそんなにすんなり飲めるの?無理して飲んでる感じでもない。
「子供の頃に飲んでたシャンパンは甘いイメージがあるけど、これは殆どスパークリングワインって感じだなぁ」
とか言いながら。俺はカラになった片山のグラスにまたシャンパンを注ぐ。
「あっくん、お酒強いね」
「強い…かなぁ」
確かに俺は高校の時から普通にビールやカクテルは晩酌してた。時には調子に乗って日本酒(熱燗)だとか焼酎も飲んだ。ワインだけは酸っぱいので遠慮してたけど。その俺からすればシャンパンなんて子供の飲み物…なはずなんだけど、やっぱり女の味覚だと違う。シャンパンですらアルコール度数が高く感じる。でも…でも、これをすいすい飲まないと、格好がつかないじゃないか。
「あ、あたしも、あっくんをマネて、一気にグイって行くね」
「いや、無理にマネ無くても…」
「(ぐい…と一気に飲む)」
「あ〜…大丈夫?」
「ちょっと、酔ってきた」
酒を飲むときは食べ物を食べながらで飲まないと酒に飲まれてしまう。というのは長年酒を飲んできた俺の教訓の一つでもある。食べ物を食べながら、というのは酒の肴程度ではない。解りやすく言えば、牛丼を食べながら酒を飲むという言い回しがいいだろう。それぐらい胃に負担をかけながら酒を飲まないと、アルコールの周りが激しくてビール程度でもほろ酔い気分になってしまう。逆に胃の中が満たされれば焼酎を飲もうが日本酒を飲もうがテキーラを原液で飲もうがアルコールの吸収速度が緩やかになっていく。ただし、吸収速度が緩やかになるだけで、結局最後には身体にアルコールが回ってしまう事になるから、飲み会の後はジュースでもお茶でも水でもいいからアルコール濃度を薄める事をするべきだろう。
さて、俺のアルコール談義はこれぐらいにして、気づけば俺はサラダを片山の口に運んでいる作業を楽しんでいた。
「はい、あーん」
「あーん」
ぱくり。と片山も若干ほほを赤くしながら、俺が器用にフォークに刺してまとめたサラダをモグモグしている。そして今度は片山のほうが、プチトマトを口に挟んで、俺の口の近くに持ってくる。そう、人は何故キスをするのか、という疑問の答えはここにあり、この口移しという行為が太古の昔から哺乳類の間で行われてきた事に由来しているのだ。俺の血の中に眠る太古の記憶が呼び起こされて、俺は本能に赴くままに片山のプチトマトを片山の唇ごと、挟み込んだ。まるで食べる事よりもキスする事に重点を置くがごとく。
「あーっ!またキスしてるよー!」
俺は額の血管が浮き出そうになるのを我慢した。またしてもあのガキが俺と片山の関係に興味を持っているようで、わざわざクソ離れたテーブルからこっちまで足を運んでキスシーンを見てやがったのだ。俺は唇を離してガキを睨む。片山も同じようにキレてるようで、ガキを睨んだ後に「シッシッ」と手を振って見せた。そんな事をしてたらようやくクソガキの親が豚みたいに食べカスをほほにつけながらこっちに歩み寄ってきて、
「あや!こっちに来なさい!なんでそっちいくの!」
そうそう。子豚は親豚の元へと行け!
そんな光景をみながらも片山が一言。
「ったく、躾がなってないガキだな」
そしてそれに続けて俺も、
「ここはいつからファミレスになったのですの…」
言うは言うは、暴言の嵐。二人ともケチをつけるセンスは一人前に持ち合わせているので、停めるものが居ないのなら競い合うように文句を言うのだ。でもまぁ、あの家族連れも『あの勢いで』食べていたらあっというまにお腹はいっぱいになるだろう。そしたら巣に帰るだろうからソレまでの我慢だ!
続けてボーイが持ってきたのは『豚肉の切れ端に美味しそうなタレが掛かっている料理』周囲にはこれまたあまり見慣れない野菜がいくつか。オードブルって奴なのかな?とりあえずボーイが来たのでからかってみようと思う。ちなみに、俺はさっきからほろ酔い気分で、片山に口移しでサラダなんかを上げてたので片山の胸にぴったりと背中をくっ付けたバカみたいな格好をしてた。
「ちょっと貴方」
「はい」
「とても美味しくてよ」
「はっ、有難う御座います」
それにあわせて片山も、
「お嬢様はお喜びだ」
と、片山、かなり酔っているなw
「チップよ」
俺はそう言って、スカートの裾を少しめくって、わざとらしく大胆に足を組んでみせた。それを見てボーイはぽかんと口を開けて後、「し、失礼します」と言ってその場を立ち去った。
「ちょっwwwwまひるwwwwwやりすぎwwww」
「wwwwwwwwwwwwwww」
二人で大笑いをした。なんてガラの悪い客なんだ、だとかも頭の隅っこにはおきながらw
フォークとナイフでかちゃかちゃとやりながら、豚肉のステーキを頂く。これはただ焼いてるんじゃなくて、多分、ワインとトマトで煮込んで少し焦げ目をつけた感じがあるなぁ。実に美味だ。そういえば、俺って昔からフォークを右手、ナイフを左手に持つ習慣がある。もちろん、それが違う事は知ってるんだけど、一応、右利きだしお箸も使う器用なほうの手が右だからしょうがないのだよ。んで、片山も同じ様にフォークが右、ナイフが左だ。
ふと、例の家族連れを見てみると、ここで噴出しそうになったのだけれど、奴等、俺の予測していたとおり、サラダバーを食い過ぎてメインのステーキがもっさり乗った鉄板を持ってこられてうんざりした表情で苦しそうに食ってるよw
「ねぇwあっくんwwアレ見て、アレ」
俺が指差す方向を片山が見ると、思いっきり噴出す片山。
「いわんこっちゃないwww」
その家族でガキのほうは既にギブアップしてるのか、それとも状況を把握出来てないのか、デザートらしきものをサラダバーから取ってきて母親に叱られてるww父親は我慢して食べてはいたが、途中で「うぇっ」って感じの仕草をした。ここで俺も片山もさらに追い討ちを駆けられて吹いたw。一番頑張っているのが母親で、普段から大食なのか、黙々とサラダバーを突きながらもステーキも食っている。いつから大食い選手権開場になったのだろうか。こりゃ、母親は糖尿で足か手の指を何本か持って行かれるなw
こちらもそろそろ食べるペースも上がってきた。メインの料理が出てくるからだ。でもポークのステーキみたいなのが既に登場してるから、ここであの家族が食べてるようなステーキが出てくるのは考えにくい。どうやらイタリアンっぽいから出てくるのは、ピザかパスタかな?と、そこで凄い食欲をそそる香りがしてきた。これは、トマト風味ではあるのだけれど、ちょっと辛子が入ってるって感じの?
運ばれてきたのは『ペスカトーレ』。血みたいに真っ赤になったパスタの上に海老や貝殻付きのカラス貝、それからイカの輪切りしたのとか魚介類が沢山。その香りたるや、どんなにお腹がいっぱいになっていても胃が頑張って空きを作るような、まさに味が良いだけでは収まらない、そんな力を兼ね備えた料理だ。
「こりゃ、美味しそうだな」
と片山。では早速だけど、俺は海老を口に含んで片山にサプライズだ。
「んむ、んちゅ」
と二人はイヤラシイ音を立ててから、片山の口の中に海老が行き渡った。
「美味しい。凄い美味しい」
それから片山は俺の唇に残っているペスカトーレのソースを舌先で綺麗に取った。
しかしこのペスカトーレというパスタは本当に美味しい。余程の魚介類嫌いでなければ、そして余程の辛いもの嫌いでもなければ、うだるような夏で食欲が減退していてもすいすい食べれそうだ。そして食べてて身体がぽかぽかしてくるのを感じた。クーラーが効きまくってるこのフロアで、身体を温めてたのがお酒だけだったのだけれど、今はこの真っ赤な美味しいソースでも温まりつつある。
「あー美味しかった」と、片山が食べ終わってから、しばらくして俺も完食。
ほんとに美味しかった。
デザートは、それが沢山入ったカートをボーイが持ってきて、その中から好きな奴をいくつか選べって事だった。俺はその中からティラミスとチーズケーキの二つを選んだ。よく考えると片山はティラミスだけしか選んでない。俺ってそんなに甘いものが苦手だっけ?と、思い起こすも、確かに望んで甘いものを食べた事はないな。かといって嫌いってわけでもない。ただ、それほど興味は沸かなかっただけだ。でも、女になってからは甘いものが非常に恋しくなってきてる。まさかケーキを2皿とるとは自分でも信じられないよ。
そしてこのケーキも美味しい。
「おいしい!」
などと叫んでしまうほど。ケーキが美味しいと感じたのはガキの頃いらいか。若干男と比べると、味覚も違うみたいだ。片山は美味しいとは言ったがそれほどおいしそうには食べてはいない。そして「コーヒーが欲しいところだなぁ」などという。甘すぎるのだろうか。俺はコーヒーが無くても全然食べれるのだが。
そしてフルコースはここでおしまい。俺と片山はそのフロアを出て隣の部屋にある『ヴァルハラ』って名前のバーに入った。ってか、そこへ入る前に例の家族連れがまだフロアに残ってるのをみた。
「ねぇ、見て」
俺が指差した先には、本気で顔が青ざめて、なおも運ばれてきた冷めたステーキをほおばろうとする母親、それから頭を抱えて何かの病気に苦しんでるような感じの父親、そして「もうお風呂いきたーい」なんていってそうな雰囲気のガキがいる。こいつらは何だ?ホテルに苦しみに来たのだろうか?どこかの宗教では7つの罪を定めて、その中には大食も含まれている。その大食って罪の罰が即席で来たのだろうか。
「なんか…見てるとこっちも気分が悪くなりそうだな」
と片山。そして俺も。
「うん…もうあの家族、このホテルに来ないだろうね」
そして、ヴァルハラってバーでは俺と片山は最初、バーと言えばカウンターでしょ、なんて思っていたのだけど、カウンターには結構年配のカップルが座っててなんとなくそこの傍でいちゃいちゃ出来ないと感じ、テーブル席に座った。しかもさっきと同じように向かい合ってではなく隣り合って座った。
「こんばんは。何になさいますか?」
テーブルに座るのを待っていたように、女性の(ズボンをはいた)バーテンみたいな人が来た。隣り合って座っている様子に少し違和感を感じてる風だ。何になさいますか、などと言いながらもメニューはどこにもない。こういうバーってのはメニューが無いもんだな。改めて知った。俺は30歳にもなれば大概自分が飲んでるカクテルの名前は数種類はスラスラいえるんだけど、わかんなかったらウイスキーとでも言えばいいかな。
「えと、じゃあマティーニで」と片山。
マティーニ!そんなお酒は俺は飲んだ事がない。いや、この前上司に無理に連れて行かれたバーでは「同じものを」って言ってマティーニを飲んだきがする。でも何故その名前を…?いや、マティーニなんてカクテルはどこにでもあるし、映画でも登場してるから、もしかして飲んだ事ないけどとりあえず頼んだって奴か!
「じゃあ、あたしも同じ奴で」
いくか。いけるか?マティーニは男の俺でも度がキツイって思ったぐらいのアルコール濃度だったぞ。でも、気合だ。片山はマティーニを始めて飲むのだから、それがどれほどに度がキツイお酒か全然わかってないみたいだ。バーテンダーが酒を準備してる様子を楽しそうに見てる。しばらくしてから、ことっ、と俺と片山の前には小さなグラスが置かれる。
「おぉ、小さい…」
なんて言ってる片山。いや、そのグラスが大きかったら急性アルコール中毒になるよ…。
「柑橘系の香りがするな」
と言って片山がグイッとそれを半分ほど口に含んで飲み干す。
「こ、これは…きっつッ!」
「そ、それじゃ、あたしも行くね」
俺も片山みたいに…一気に半分は無理だった。4分の1程度なら飲めた。けど、喉が焼けるような感じで胃までアルコールが流れ落ちてくるのがわかる。その感触はそれはそれで気持ち良いのだけど、本能でこれはヤバイぐらいのアルコール度数だ、って呼びかけてきてる。俺は頭がくらくらしてくるのを少し楽しみながら、片山の胸に身体を寄りかかっていった。
「よしよし、いい子だ。酔った?」
片山は俺の頭をすりすりと撫でながら言う。
「うん…結構度がキツイね」
「キツイね…確かに」
酒に酔わせて女を…とかいう話はよく聞くけど、じゃあお酒がバイアグラみたいな勃起を誘うものかといえばそうでもなく、性欲がわきあがるかと言えばそうでもない。むしろ、お酒を飲んでしまうと男だとアソコが立たなくなる。では女の俺はどうか。実はアソコが立たなくなってる。正確にはクリちゃんだが。片山の肩に頭を乗っけて、それから片山の手が俺の腰あたりに回されてくると普段なら触ってもらう感触が気持ちよくなるのだが、一向にそうならない。むしろ、身体の全感覚が鈍感になってきてる感じだ。
案の定、片山も同じで、俺がさっきから片山のズボンの上からチンコを撫でてあげたのだが勃起してこない。やっぱりアルコールが入るとチンコがダメになってしまうなぁ。
まひる、改めて考えると滅茶苦茶ウエスト細いよなぁ」
「え、そう、ありがと〜」
ふわふわと雲の上に浮かぶ気分でリラックスできているのは事実だ。そのまま片山に甘えるように、彼のネクタイを緩めてあげて、その胸板やらを手で軽くさすってみる。そのお返しと言わんばかりに片山の手が今度は俺のおっぱいを下から持ち上げるようになる。左手は腰に、右手をおっぱいに。ノーブラなので手の感触がドレス越しに伝わってきて気持ちいい。それでも酔っていないときに比べると気持ちよさは半減してるが。
「ねぇ、ここで騎乗位とかやったら叱られるかな?」
「そりゃ無理だよwwそれにさっきからバーテンの女の人、こっち見てるみたいだし」
片山がそう言うとおり、バーテンの女性の人は待機しててテーブルから注文があったらそこへ向かう、って役割が仕事なのか、ちくじテーブル席のほうをみてる。だが、その視線は平等に見てるのとは違って、やっぱり俺と片山のテーブル席に注がれる率は多いみたいだ。
「そっか、残念」
と言いながらも俺は片山の上に跨った。
「と、言って諦めるとでも思ってたのですか!」
などと言いながら、片山の上でマンコをズボン・パンツ越しにチンコに擦りつけながら。
「ちょっwwヤバイ、ヤバイってw」
俺は片山の耳元で周囲に声が聞こえないように、
「ねぇ、バーテン、こっち見てる?」
同じように片山も俺の耳元で周囲に声が聞こえないように、
「ガン見してるよ…」
それから顔を離した。
向かい合って笑顔のままで、見つめあう俺と片山。
片山の手が俺のスカートを少したくし上げて、ガーターのバンドの部分を触る。
「あ、すごい。パンツはガーターの上から履くんだね」
「うん」
片山の手を悪戯にとって、そのままパンツのマン筋を触らせる。一方でもう一つの手は俺の腰のあたりからお尻に降りてきてお尻を揉んでいる。パンツにあった片山の手を今度は胸に持ってくる。おっぱいをマッサージしてもらう。
「ノーブラっていうけど、このドレスってパッド入ってる?」
「パッドっていうか、ブラみたいなのが入ってるみたい」
俺はマティーニを少しと、マティーニに入ってるさくらんぼみたいな果物を口に含むと、それを片山の半開きの口に口移しで注ぎ込んだ。ちょっとだけ零れたマティーニ、それを舌先で綺麗にふき取る。片山は目を瞑って気持ちよさに耐えてる。
「ん、この果物、あんまし美味しくない」
片山が半かじりした果物を、まぁ美味しくないのならしょうがないと、俺はまた半開きになった片山の口の中に舌を突っ込んで果物を奪い取る。それをグラスに戻した後、再び片山の口の中に舌を突っ込んで、まるで掃除でもするようにディープキスをした。
「ぷはぁ」
と、口を離して糸を引いているのを確認した片山。それから俺のおっぱいの谷間に顔を突っ込んだ。顔を動かすんじゃなくて俺の身体を、腰の部分に手を回して自分のほうへと引き寄せながら、ゆっさゆっさと揺らしておっぱいの感触を楽しんでいる。流石にそろそろ周囲の視線を集めてるんじゃないかと、俺はバーテン(女)のほうを振り返る。そして悪戯した後に子供が舌を出して影へと隠れるように、そっと片山の上を離れて隣へちょこんと座った。バーテン(女)は俺と目があったら不自然にもすぐに目を逸らした。まるでさっきから見ていた事をバレないようにしてるみたいに。
「そんじゃ、今度は俺が」
と片山はマティーニを口に含む。
俺は口を半開きにしてそれを待った。片山の唇が少し触れた後に、多分、殆どは俺の口に入ったはずだが、零れたマティーニの残りは唇から喉、そして胸の谷間へと零れてしまった。
「ん…」
口に含んで喉を通るマティーニのアルコールを感じながら、今度は片山の舌先が俺の唇から喉、そして胸につつつつつ、と動いてくる。ちょっと冷たい。カクテルを飲んでいたせいだろう。それから胸のところで何故か動きを止める片山。もう零れたマティーニは全部救い上げたはずなのに。というか、やっぱりそれをやったか、って感じに、片山は唇で俺のおっぱいの肉を挟んだり、それからちょっとだけドレスをズラして乳首をツンツンと舌先で突いたりした。あまりの気持ちよさに身体をよじってしまった。
「ちょっ、あっ…くん、それはマズイんじゃ…」
片山はドレスからはみ出たチチを再びドレスの中に戻すと、
「よし、これで零れたのは全部ふき取ったよ」
とか言ってる。
「もーwそんなとこまで零れてないw」
と、ここで再びバーテン(女)を見る。やっぱりこっちを見てたwすぐに目を逸らすバーテン(女)いや、ワザとらしく逸らしてるから余計に怪しいよw
そうこうしてると、マティーニはカラになった。
「次のお酒頼む?」
「うん、何にしようか。マティーニときたら…」
マルガリータ?」
「おー。そんなカクテルがあった気がする」
片山は、ずっとこちらの席ばかりを見ていたバーテン(女)を手をあげて呼ぶ。先ほどまでイヤラシイ事をしていた客が自分を呼んだのだ。何かと一瞬焦りながらも、急いでこちらへくる。そして片山が注文した。
「は、はい」
「えと、マルガリータを」
「は、はい、かしこまりました」
「二つね」
「はい」
俺と片山がちゅっっちゅっしていちゃついていたら、そのバーテン(女)がマルガリータを持ってきていた。「あ、どうも」と片山がそれに反応するのだが、その女性はカタカタと震えながらグラスをテーブルの上に置いた。年は25かそこら、その女性が高校生ぐらいの年齢のやつらの行為をみてこうも恐縮するのだから滑稽な話だ。ちょっとからかってみよう。
「大丈夫ですか?震えてますよ」
「ああ、あ、大丈夫です」
「(そっとその手に触る)」
これを片山がやればセクハラだが俺がやったのだから問題ない。のだが、突然の事でその女、手をすぐに引っ込めた。
「だ、大丈夫です!」
などと震える声で言う。それからそそくさと元の位置に戻っていった。
それから俺と片山は先ほどとは違って(それでも十分にキツイ部類のカクテルに入るが)アルコール濃度が薄いマルガリータを楽しんでいた。
俺は片山のネクタイを完全に外して、肌蹴た胸板のあたりにちゅっちゅっとキスを何度かした。そしてもう復活したかどうか確認するためにも、片山のズボンの上からチンコをさすってみる。まだ復活してないっぽい。
「やっぱ、アルコール入ると立たなくなるな」
などと片山が言う。
「そうだね、あたしも立たなくなってるっぽい」
「え?乳首とか?」
「乳首とか…あとはクリちゃんも」
「ほうほう、どれどれ」
とか言いながら、片山はまたスカートの中に手を突っ込んできて、今度はパンツの間に指を突っ込んできた。まだ全然濡れてないんだけどね。それに気づいたからか、片山は今度はマルガリータのグラスに指を突っ込んでから「アルコール消毒で」と言い、その濡れた指をパンツの隙間からマンコの赤ちゃんが出入りするほうの穴へとゆっくり入れる。
「んん…」
片山の左手は俺の左肩、それから右手はスカートの中っていう体勢で俺は身体を捩じらせながら片山の愛撫を味わっていた。まさかと思うが、この瞬間にもあのバーテン(女)は見てるんじゃなかろうな?と、俺はバーテンのほうを見た。あ、やっぱり見てた。目が合ったので俺はウインクしてみた。すぐさま目を逸らすバーテン(女)
「ね、ねぇ、濡れてる?」
「ん…わかんない。ちょっと奥まで手を突っ込めば解るかも」
片山はそう言うと、手の角度を本格的に手マンする時の角度にして奥まで指を突っ込んでくる。って、その突っ込んでくる感触が一番気持ちいいんだよね。マジでこりゃヤバイ。
「あっ!!ん」
俺は思わず声が出てしまった。見れば初老のカップルっぽい奴等も、バーテン(男)も、それからバーテン(女)も、隣のテーブルの席のサラリーマン風の男も、いっせいにこちらを見た。流石にこれはヤバイ。
片山は何事も無かったかのように静かにマンコから指を引き抜いて、まだ愛液がついている指をペロペロと舐めた後、マルガリータを少し口に含んでから、
「夜景が綺麗だ…」と渋く言ってみせた。
と、その隣で俺ははぁはぁと息を切らしながらぐったりしていた。
そろそろ部屋に戻るかw