1 七海と日和 2

俺はお兄ちゃん(お義兄ちゃん)のショッキングなオナニーシーンを目撃してから、もう一度彼の部屋に入ることも出来ず、じゃあ1階でテレビでも見ておこうと思い、1階でテレビを見てた。
「挨拶してきたのか?」
「なんか急がしそうだったからしてない」
(新)お袋が「あらー」と言う。なんで忙しかったのか知ってるのかな?
それから親父とお袋の二人はニヘラニヘラしながら話し込んだ。もう18時を過ぎた頃にそろそろ食事をと、じゃあ出前でもと、(作るんじゃないのかよ)せっかく家族みんなで暮らし始めたのだから、豪勢な出前でも頼みましょうとオードブルらしきものを注文してたりした。
小一時間してからそのオードブルやらお酒やらお寿司やらが届く。
お袋、どこかへ電話してる。相手は…日和?
「みんなで食べるから降りてきなさい。なぁに?そうよ。いらない?なんで?もうッ」
どうやら子機に電話してたみたい。
結局、日和は降りてこなかった。
「七海ちゃん、ごめんなさいね、日和に食事持ってってくれる?」
「え?(自分で持っていけよ、お前の息子だろうが)」
「お・ね・が・い」
うぜぇ…!
どうやら兄弟仲良くして欲しいってのが狙いらしい。
会ったその日にお義兄さんのオナニー現場を目撃してから仲良くといわれても。
しぶしぶお皿にお寿司やらオードブルの品を装ってから2階へと運ぶ。
日和の部屋前。
今度はちゃんとノックをしよう。
(コンコン)
何かドタドタと音が聞こえた後、静かになって、「はい」と声。
ドアを開けて部屋に入ろうとする俺。
「え、ちょっと!入らないで!」
「へ?」
さすがにオナニーの最中ではなかったけども、部屋に散らかってるエロゲはそのまま。四面を囲むポスターはそのまま。パソコンのディスプレイにはさすがに美少女は映ってはいない。けども、今の部屋の様子を俺に見られたく無かったらしい。
「これ、どうすれば」
とお盆を持って立ち尽くす俺。
「廊下に置いといて」
「え…」
「いや、その、なんつうか、俺の部屋、女の子が入れるような部屋じゃないんだよ、さっき見たろ」
「別に、気にしてないって」
そう。気にならない。俺もエロゲーするし。
俺はズカズカと部屋に侵入して、デスクの上にお盆を置いた。
「ああ、もう、マジかよ」
マジかよって、デスクの上にお盆を置くのがそんなにショッキングなのか。お前のオナニー目撃するほうが余程ショッキングだったの。
「男の事情でしょ。気にしてないから」
「わ、わかったよ。用事が済んだら出てってくれよ」
え、なんだよソレは。
「お母さんから仲良くするように言われてるの。あたし、七海。よろしく」
握手の為に手を出した。
「え?えと、俺は日和。…よろしく」
そして握手。
「よ、用事終わったろ、じゃあな」
「はぁ?またオナニーすんの?」
「しねーよ!」
「だから、さっきも言ったけどさ、」
「わーったよ、わーった。仲良くしろって事だろ」
日和はそう言いながら、喉に流し込むみたいにオードブルやら寿司やらを食べてる。
「じゃあ、自己紹介から」と俺。
「え、さっき自己紹介したじゃん。名前言っただろ」
「いや、趣味とか」
「趣味?」
エロゲー?」
「ああ…いや、なッ、なんだよ!ちげーよ」
「趣味はエロゲーっと」
「違うっての!じゃあお前は何なんだよ」
「ゲームとか」
「なんだよ、エロゲとゲームってあんま変わんないじゃん」
「え、本当にエロゲが趣味なの?」
「違うって!読書とか、あとは、映画鑑賞とか」
「ふーん」
部屋を見渡す。
読書…ライトノベルが本棚に並んでる。
映画…これはアニメのDVDかな。映画と呼べるものがない。全部テレビシリーズをDVD化したものじゃん。せめて劇場版とかないの。
「ちょっ、あんま俺の部屋を見渡すな!」
「読書に映画…ねぇ」
「もう、カンベンしてくれよ」
ティッシュは片付けたんだね」
「あーもうッ!いいから出てけよ!」
日和は俺の肩を掴んで押して出そうとする。
強く押すから、倒れそうになる。
そのままペタンとベッドのところに押し倒された。
何かムカついてきた。
ちょっとからかってやろう。
そのままワザとベットに倒れた俺は、その衝撃(軽く)でスカートが捲れ上がってパンツが見えた。ピンクと白色のシマシマのパンツだ。それを隠そうともせずに、俺は怯えた表情になる。
「あ!ご、ゴメン、そういうつもりは…」
と、いいつつも日和は俺の下半身から目を逸らさない。
仕方が無いので俺はスカートで隠した。そこでやっとマズイ事をしてたんだと日和は気付き、俺に背を向けてご飯を食べ始める。
俺はその様子を黙って見つめた。ベッドに横になりながら。
ふと、日和がくるりと向き直って俺を見て、今もなお、俺がじっと日和を見つめてるのに驚いて身体をビクつかせる。
「な、なんだよ。悪かったよ、悪かった。俺が悪ぅございました。すいませんでした。いいよ、好きなだけ部屋に居ろよ。ったく…(ブツブツ)」
それから俺は棚にあった漫画を一つ取ってはベッドに転がって読んで、終わったらまた一つ取ってはベッドに転がって読んで、時折ケタケタと自分でも変に思うぐらいに大声で笑いながら読んだ。