5 外食に行きましょう 3

覚えてるのは、日和が何故か自分をおんぶしてて、その大きな背中に担がれながらどこかへ行ってるって時からだ。
「ん?お。起きたか」
「んんん…何?」
「何じゃねーよ、覚えてないのか?」
「うん」
「お前、飲みまくって急に眠くなったとか言い出して、俺の股に顔埋めて寝始めたじゃねーか。あれにはさすがにお袋も親父もビックリしたぞ。フェラしてるみたいだったから」
「さいあく」
「最悪はお前だよ」
「もう歩けるからおろして。ってかどこに連れてこうとしてるの?」
「ええっと…ラブホテル」
「え、ちょっと、放して!」
俺は日和の背中で暴れて降りようとする。
「まてまてまて!嘘だよ嘘!あれだ、ネカフェいくの、ネカフェ」
「はぁ?なんで?」
「いや、だからさ。親父とお袋は今から二人でどっかいくって話だから、俺等は適当に遊んで帰りなさいだって」
「それでネカフェいくの?」
「そうそう」
「まぁ、いいけど」
「ん?お前どっか行きたいとこあるの?ラブホとか」
「そんなわけないじゃん。っていうか、もう歩けるから降ろして」
「えーいいだろ。お前のおっぱいが背中にあたって暖かいんだよ」
「はぁ、なんだかツッ込むのも疲れてきた」
今の時期は年末、そしてクリスマスが近いから、うちの田舎町ではクリスマスツリーが街頭に飾られてる。それもちっさい奴じゃなくて、本物の木に電球を沢山つけたものだ。だからそれを見ようと沢山の人達、つまり、沢山の恋人達が歩いてる。
そんな中で俺は日和におんぶされて、移動してる。
これは他の奴等の目にどう映るのだろうか。
「やっぱり恥ずかしい。降ろして」
俺はさっきよりも力が入り始めたので、無理に暴れて日和の背中から降りた。そうしなくても、日和も疲れてたのか降ろしてくれたのだが。
それで俺が暴れて降りたものだから、ひっくり返りそうになって、日和が俺の腰に手を回してそれを支えた。
「っとっと…あぶねー」
「あ、ありがとう」
何とも奇妙な腰キャッチだ。何を二人して踊ってるんだとか思われそう。
何故か俺の目から目を話さない日和。
「え、何?」
なんだかイヤーな汗を掻いて、日和に聞いてみると、
「や、別に…」
今まで何度かあったけど。今までの何度かってのは日和以外の男からだ。どうもこの自分の顔は、自分で言うのもなんだが男にはモテる顔らしい。中身が男でエロゲが好きで、だからこそエロゲ内の登場人物に知らぬ間に似てくる自分のルックスは余計に男をおびき寄せてしまうのだろうか。
「お前、意外と可愛いな」
突然日和が言う。いや、突然言うなよ。そういう事をストレートに。
「ええっと…可愛いといわれても何も出てこないよ」
二人でクリスマスツリーの間を白い息を吐きながらネカフェに向かって歩いていった。