5 アスティ 3

パソコンで印刷されたような資料を手に説明を受けた。
特に自分が注目したのは給料だ。60分で1万円。これはこの地域では一番高い給料らしい。ただし完全に日払いで、もし客が来ないのなら給料は貰えない。でも60分で1万円って、俺が高校の夏休みに新聞配達をしたバイト1ヶ月分の給料が2時間で稼げる計算になる。
バカみたいじゃないか。ただ、それだけの嫌な事を好きでもない奴としなければならないというのだから、代償としてはありだとは思う。
「源氏名は何にする？」
「なんですか、源氏名って」
「お客さんに呼んでもらう時の名前だよ。実名はまずいんで仮の名前を決めるの。本当に風俗初めてなんだねぇ…水商売系の仕事もしたことないんだよね」
「えっと…何にしようかな」
今の自分の名前だって、源氏名のようなものか。女になってからつけたようなものだし。だから、ここは適当に覚えやすい名前にしようか。
「ナナで」
「ナナちゃんかぁ。いいね」
「しっかしナナちゃん、可愛いねぇ。少女漫画から飛び出してきたような顔だよ」
「そうですか？」
「そうだよ、ロリロリしてるっていうか」
「ロリロリ…」
「どうする？今日からでも働けるけど」
「いえ、今日はやめときます」
心の準備も少しあるし、まだ熱も下がってないし。