7 初めてのお客さん 2

エレベーターを降りると番号のランプが消灯してる部屋と点灯してる部屋が並んでいる。静かだ。この点灯してる部屋が人が入ってる部屋なのか。平日の昼間なのにこんなに沢山の人がいるのか。ラブホテルに。
指定された部屋の前に来た。
震える手でノックする。
トントンと、こちらに歩いてくる足音が聞こえた後に、扉がゆっくりと開いた。
そこで初めてお客と顔を合わせるのだ。
「え?」
「え…」
「美東…さん?」
美東じゃないか!
健康パークで一緒にお風呂掃除をした人だ。
俺が熱を出して倒れた時、家まで送ってくれた人だ。
「結城さん…え?な、何やってるの?」
「え、いや、その…お金無いから風俗で、って、美東さんも何やってるの?」
なんだか背後から音が。ホテルの従業員がいる。
ここで立ち話をしても目立つだけだ。
俺は部屋の中に入った。
俺と美東はソファに腰を掛けて話した。
美東はバイトしてお金を貯めて風俗に行くつもりだったらしい。けれども市内には風俗店(店舗あり)そのものが無いし、かといって隣県まで電車で行くのもお金が掛かる、だからデリバリーヘルスに行く事にしたらしい。
それから俺は自分の事情を話しした。
でもそんな話をしてる間にも時間はどんどん過ぎていく。もう20分ぐらい話した。バイトで貯めたお金がこんな世間話で使わせてしまうのはまずい。
「えと…その、俺でいいの?」
「え?」
「いや、だって、知り合いとは思わなかったし」
「別に…いいよ。それより時間が無くなるから、まずいよ」
「ああ、いいよ、俺、延長とかできるし」
「それじゃあ、電話掛けるね」
最初に店長に電話をして、コースは何分なのかとか言うんだっけ。
「コースは何分のにするの?」
「えっと…じゃあ90分で」
「わかった」
自分が店長に電話している間にも、美東はソワソワとテレビ欄を見たりとかホテルのサービスを見たりとか、落ち着きが無かった。俺も同じく心臓がドキドキしてる。
まさか知り合いが一番最初に来るとは、思ってもいなかった。