2 招待状 2

そろそろ待ち合わせの時間。
廊下を歩く足音は複数だった。
ノックの後に部屋に現れたのは最初に年配の男性、それから同じ年齢ぐらいの女性。年は40ぐらいだろうか。それから15、6の女の子が現れた。どうやら親子で来たらしい。
それにしても平日にも係わらず父親まで来てくれるとは、子供思いの家族だな。
15、6の女の子はXX病患者なわけだから女性化したというわけだ。XX病は男のときの名残は殆ど残さないほどに変化してしまう。それを我が子と思って大切にするような親というのは珍しいものだ。これはそれだけ以前から両親の愛が沢山注がれてた子供なのだろうか。
「そちらのお子さんがXX病の…?」
母親に聞いてみる。
「あ、はい。息子の、あ、今は娘ですけど、ユウキです」
ユウキか。男性の時から名前は変えていないとも思えるな。
「進学先をどうしようかと考えていまして」
「あー。なるほど」
「やはりどこの高校にしても…大変なのでしょうかね」
「少し前ならちょっと大変でしたけどね、今はXX病に関してよく考えられていますよ」
「そうなんですか?」
「ええ」
僕はあらかじめ用意していた県内の高校の一覧を印刷していたのをお見せした。
「このマーキングしてある高校がXX病の対策をしてるところですよ」
「対策というのは具体的にどんなことですか?」
今度は父親が聞いてくる。
「教師がXX病について理解があるのはもちろんですが、他の生徒に秘密にしたり、後は更衣室やトイレなどを分けてくれたりというのもありますね」
「男子と一緒に着替えるという事はないという事なんですね?」
…もしかして中学の時には男子と一緒に着替えていたのだろうか。よく聞く話だが、少なくとも男子にとっては刺激的だっただろうな。よくまぁ問題にならなくてすんだよ。
「それは〜。このマーキングされた高校ではないですね。他の高校はどうかはわかりませんが。逆に男性として扱うという事を試みる高校もあるようです。でも問題は多いですね」
「はぁ…どこかお奨めはありますか?」
「もし学力に自信がおありなら」と、僕はマーキングされた中で一番上のを指差してから、「桜ヶ丘高校がお奨めですよ」と言った。
ちょうどパンフレットもあるので、それをお渡ししてみてもらった。