1 私立桜ヶ丘高校 3

ボクの隣の席の女の子はメガネを掛けてて髪はアップにしてた。
それがメガネととてもあってて凄い大人びてるようなオシャレなような、とにかく、ボクみたいなのとはつりあわない感じの女の子だった。
いつもみたいにボクは席に座ったら視線を机の上に向けて誰とも目があわないようにしたんだ。小学校からそうやってきたから今さら苦痛じゃなかった。クセみたいなものだよ。
そしたら、突然ボクの隣のメガネの女の子が話し掛けてきたんだ。
ボクの事を普通の女の子だと思っているんだろうなぁ…って思っていたら、
「ヨウコソ、同志!」
なんて言うもんだからびっくりした。なんだろう同志?
ボクが何も返さず、口をあんぐりあけてメガネの女の子を見てたら、いきなりその子はボクの肩をパンと叩いてきて、
「何すっ呆けてるんだよ。男なんだろ?」
と周囲に聞こえないような小声で…。え?なんで知ってるの?
「え、なん」
「知ってるよ!この高校にいる女は全員、元は男なんだよ!常識だぜ」
「え?!だ、だんしは」
「シィーッ!男子は知らないよ!誰にも言うなよ」
「うん、うん」
なんだ!そういう事なの?ここにいる女子は全員?え?もしかして先生も?
「先生は?」
「先生もだよ」
ボクはさっきボクの事を紹介してくれた担任の20代ぐらいの先生の顔をマジマジと見てみた。どこからどうみても女性…っていうか、女性よりも女性って感じだよ。凄い。
「みんな美人なんだね」
「ま、そりゃXX病の宿命って奴さ」
そう言ってちょっと長い前髪をかきあげてるメガネの女の子。胸元もボタンは3つぐらい外してて、セクシーにもブラが見えてる。普通の女子なら恥ずかしくてそんな格好できない。やっぱり男だからなのかな。そしてそのメガネの子は、
「オレ、じゃなかった、あたしは松芝アヤメ。よろしくッ」
そう言ってボクに握手を求めたんだ。ボクは喜んで握手した。
なんだか緊張が一気に解けて、安心して、そしてすごく楽しくなってきた。
やっぱりこの高校にしてよかった。