8 早速ですが遭難しました 2

日和のその建物の周りを回っていた。
別荘のようにも見える。親父が再婚する前にお袋と3人で行ったキャンプ場に似たような建物があった。なんていう建物だっけ?ペンション?コテージ?
だがその建物の周囲は雪で閉ざされていて正面は埋もれている。裏に回ったとき初めてその建物の扉と思わしき場所に出くわした。木で作られたオープンデッキの上に裏口の扉と思われるものがある。
「こっから入ろうぜ」
日和が雪を掻き分けながらその扉に近づいた。
「勝手に入ってもいいのかな?」
「命が掛かってるんだ、しょうがないだろ」
「そりゃそうだけどさ」
「やっぱりカギかけてやがる」
「そりゃそうでしょ」
「よし、こういう時こそスノボの出番だ」
「まさかそういう使われ方されるとはスノボも思ってなかっただろうね」とか言いながら、俺は日和がスノボをハンマーのように振り回して裏口のノブのがんがんやる姿を見ていた。暫くするとノブが嫌な音を立ててからコロンと首を落とした。そして、ギーと音を立てて裏口の扉が開いたのだ。
「うし!」
ガッツポーズをする日和に続いて俺はその建物に侵入した。
外は横殴りの雪が降ってて寒いを通り越して痛いだったけど、建物の中は寒い。ひんやりとした寒さがある。
「電気、着てないみたいだね」
電気のスイッチをポチポチ押すも反応なし。そりゃそうだろう。と俺は自分で言いながら自分で突っ込みを入れた。外見からするとこの建物はキャンプ場か別荘の一部なのだろうから、人がここにくる時には電気が通るのだろうと思う。
「電気が使えないって事は…ヤバイな。暖房もつかないのか」
「まぁ、しょうがないよ。外の吹雪の中突っ立ってるよりかはマシだよ」
「うむ。そうだな…とにかく、朝になったら出て山を降りようか」
「うん」
俺と日和はその建物で夜を越す事とした。