8 早速ですが遭難しました 6

男の身体っていうのは意外と暖かい。
やっぱり女と違って赤ちゃんを産んで育てるように出来ていない分、体力が体温維持に使われているという事なのだろうか。最初こそ抵抗はあったけども、それ以上に部屋が寒かったから身体は正直にも日和の男の身体の暖かさを求めたのだった…。
そしていつしか俺は眠ってしまったようだ。
俺がぐっすり眠っている一方で、逆に日和は眠っていなくて目をパッチリ開けて天井のほうを見ていた。
「ん?おはよ。眠ってなかったんだ?」
「つぅか、女に抱きつかれて寝息立てられたら普通の男は眠れんわ」
部屋は静まり返って外の雪が降り積もっているような音が聞こえてくる。降り積もる音っていうとイメージ沸かないかも知れないけども、家全体が重みで軋むようなアレね。ふと、玄関が雪に埋もれていたことを思い出して、もしかしたら俺達この建物から出れなくなるんじゃないかって考えてしまった。
「ねぇ日和」
「ん?」
「このままここから出れなくなったらどうしよう」
「そりゃ…あれだな。ここで二人で暮らしていくしか」
「いや無理でしょ」
「もし出れなくなったら、せめて死ぬ前にやっておきたいことをしたいな」
「死ぬ前にやっておきたいことぉ?」
「そうそう。せめて死ぬ前までには童貞捨てたい」
俺は飛び退いた。
「待て待て待て!まだ死ぬと決まったわけじゃねーじゃん、そんなにビビるなって!!大丈夫だよ何もしねーからさ!つか、寒いから布団を開けるなよ」
「ったく…もし手を出してきたら噛み付いてやるから」
「でもお前だってさ、女なんだから女としての楽しみがあるだろう?…って、お前ってレズだっけ?」
「そうだよ(正確には中身男なんだけど)」
「そうか。レズか。じゃあしょうがないな」
何がしょうがないのか判らない。
でも本当にこのままだったらどうしようか。すっきり死ぬのならまだそのほうがいいような気がする。このままいけば餓死?
そんな俺の心情を知ってから知らずか日和は俺の肩を抱きしめて(なんかわざとらしく)、「大丈夫だよ、明日になって日が照ってきたらスキー場のほうに戻ろうぜ」と言った。俺の顔を見ないで胸のほうを見て言った。