10 平日の来客 4

「それじゃあ、そのソファに腰を下ろしてください」
と俺が指示する。
「こ、こうかい?」
男はオドオドしながら、ちょこんとソファに腰を下ろす。その上に俺が跨って、押し倒すように体重を掛ける。男の背がソファにめり込む。
「うわ、あ、いきなりこういう…」
「ん?」
「ああ、いえ、なんでもないです」
俺よりもひょっとしたら一周り歳が違う男が丁寧な口調で話す。
その唇を俺が塞ぐ。唇と唇がくっつく感じに。
ああ、2回目の男とのキスだ。まぁしょうがない、生きていくためだし。
だがまるで電気でも走っているかのように男の身体は筋肉を張り詰めている。緊張しまくっているみたいなのだ。
「どうしたの?」
「ちょっと、初めてで、ちょっと、緊張しちゃってて」
「そう」
初めてって、デリヘルが?もしかしてキスが始めてなのか?
「キスが始めてなの?」
「ああ、うん」
「あ、ごめんなさい。ファーストキス奪っちゃって」
「いやいやいや、全然、全然嬉しいです」
「そう」
俺はもう一度、男の唇を塞ぐ。
さっきのように口と口をちょんとくっつくキスではなく、相手が呼吸できないぐらいに唇で覆いつくすようなキスだ。むくむくの腰の辺りに棒の感触が伝わってくる。これは思いっきり勃起してるな。
唇を離すと涎が糸を引いて伸びている。
「あの、抱きしめてもいいですか?」
「うん」
男はそのスーツ姿のまま、俺の身体を両腕で覆い力強く抱きしめた。熱い、というか暖かい。これは気持ちいいかもしれない。
「ああ、すごい、女子高生と抱きしめあってるみたいだ」
「ちょっと前まで高校生でしたからね(男の)」
「え、マジで?凄いな…」
暫くキスをしたり抱きしめあったりを繰り返す。男の顔は真っ赤になって、目がうつろだ。のぼせているのだろうか。
「大丈夫?」
「ああ、うん。えっと、次は何をするのかな」
「それじゃ、服を脱ぎまちょうね〜」
俺は赤ちゃん言葉で、サラリーマン風の男のシャツのボタンに手を掛けた。男は気持ち良さそうな顔になっている。気持ち良さそうと言っても性的にではなく、マッサージを受けるときの様な顔だった。