10 平日の来客 7

「あ、濡れてる」
男の第一声はそれだった。
お湯の中に漬かっているのだから『濡れてる』というのは日本語的には誤りなのだ。正確には『愛液で濡れてる』だ。男の指が股間を這う度に身体がビクついてしまう。
「んん、ん…そ、そうですね」
と俺は精一杯に声を出して答えた。
口を開いて油断していたら喘ぎ声が出てしまうかもしれない。ので、唇に力を込めて、なんとか声が出ないようにして精一杯の台詞がそれだった。
「気持ちいい?」
更に男は俺に声を出させようとしている。別に悪意があるわけじゃないだろうけど、気持ち良さそうにするのを耐えている俺に興味があるのだろう。ここは素直に、
「うん、んはぁ、気持ちい、いよ」
と耐え耐えになりながら言う。
指がクリトリスと膣の間を行き来する。それは次第に膣のほうに興味を持ち始めて、ずるりと第2間接ぐらいまで膣に入った。
「んあ、ちょっと、ちょっとまって、まって」
「え…痛かった?」
「んん、なんでもない。いいよ」
男のアソコは先ほどにもましてギンギンになっているが、俺はそれをほったらかしにして快楽に身体を委ねていた。なんとも情けない風俗嬢である。男の片方の手は胸にまわって、もう片方の手が股間へ。その間俺の手や足はどうなっていたかと言えば、快楽を感じている間は動かしようがない。だらしなく伸ばしたままにしている。
不器用だが確実に気持ちいい部分に当たっている。バター犬がどういうものかはエロ本で見た事ぐらいしかないが、実際にはこんな感じなんだろう。不器用だが確実に気持ちいい部分を攻めてくる、という感じだ。
「ナナちゃん」
ん?ナナちゃん?ナナちゃんって誰?あ、俺か。
「ん?」
「今度は、その、口でしてくれるかな」
「あ、うん」
さっきからずっと筋肉入りっぱなしの肉棒をお湯から出して、男は立ち上がった。俺はそれを口に咥える。暖かいのが口の中に入ってくる。なんとも、ホモの気持ちが分るなぁ。どうかパニックにならないでくれ、俺の脳みそ。俺は女だから男チンコ咥えてもいい…はずだ。
しかしそれにしても、意外と大きい。さっき手で触っていたときにはそうは思わなかったんだけど。いや、実際、俺と同じぐらいのチンコのサイズはあるはず。女の口ってそれほど大きくないのか。
根元まで咥え込もうと思ったけど、こりゃ無理だ。やろうと思えば出来るかもしれないけど、思いっきり喉まで入りそうだ。そうなったら多分、胃の内容物まで吐き出してしまいそうだ。
「おっきい」
俺はそう言って口を離した。涎と精液みたいなのが俺の口から…え?
「出した?」
「はぁはぁ、ごめん、いっちゃった」
「…」
2回目はそれほど出なかった。