9 とある平日の死闘 1

とある平日の夕方、俺が学校から戻ると家は無人だった。いつもは日和と一緒に帰っていたから無人でも平気だったけどあらためて誰もいない家の鍵を空けて入るのは抵抗があるなと思った。
ちなみに日和は「今日はエロゲを買って帰るから先に帰ってて」という事だ。よくまぁ妹にそんなクソみたいな情報を伝えれるなと思ったよ。買い物があるから先にとか他にも言い方ってもんがあるだろうに。
俺もエロゲを何か嗜もうかとも思ったけど、クラスの女子からは『変態』という愛称で呼ばれて、男子からは『その系統の卓越者』と尊敬されている日和と一緒にアニメ○トをうろつこうものなら俺はたちまち変態の弟子という愛称を与えられてしまうだろう。そうに違いない。
家に帰って最初に辿り着くところは男の時代から同じ、冷蔵庫の前。ここでジュースやらアイスやらを物色して成長期の身体に足りていないカロリーを入手するのだ。さて、今日は何を食べようかな。
冷蔵庫の扉を開けると真っ先に飛び込んできたのはケーキが入っているような感じの箱。ああ、ケーキと言っても直径30センチ台のタイプじゃなくて15センチ四方の箱だ。そういえば俺は男の時にもある程度は甘いものが好きではあったが、女になってから、甘いものがとても好きになってきた。これも身体の変化と言うことか。XX病は身体だけが変化するんだと勘違いされがちではあるが、実際は脳にも変化があるらしいからな、俺は男を好きになるという変化だけはなんとか食い止めたいものだ。
などと考えながらその15センチ四方の箱をぺりぺりとシールをはいであけると、目に飛び込んできたのはプリン。なんとも高級そうなプリン。プリンは嫌いじゃないな。よく見るとプリンの表面にカラメル状のちょっと硬いのがある。これはプリンというより、ブリュレって言う奴か。美味しそうだ。
俺はテレビを見ながら「ぷりんんまー」などといいつつ、ブリュレを叩いて割っては口に運んでいた。実に楽しい時間である。