3 新生活・新部活 9

「もーッ!あの人絶対に変だよ!」
ボクはコートを離れて新聞部の部室へ戻る時に怒っていた。
「変…かぁ?普通だと思うけど」
「普通の人は人前であんないやらしい事しません」
「まぁ、男なんだから女が好きなのは変じゃないでしょ」
「そりゃそうだけど。っていうか、さっき部室でテニスウェアに着替える時に、あの人、ボクの胸とか触りまくってきたよ」
ゴクリと音が聞こえた。多分、むっつりんの唾を飲む音だ。
「あー。やっぱりか」
「ちょっ、やっぱりってなんだよーッ!」
「あの人は男の時からヤリチンで有名なんだよ。正真正銘、超ナンパ師」
「えええ!マジですか。よかった…キスとかしなくて」
「キスも迫られたのか。っていうかなんでしなかったの?」
「するわけないじゃん。そんなナンパ師と」
「お、ナンパ師嫌いな男はっけーん」
「男でナンパ師好きな人はいないって」
「どうだろね、テクニックは凄いと思うよ。あのテニス部の女子、じゃなかった女子の姿をした中身男の人達はマナカ先輩のテクニックが好きで入部してるって噂だよ」
「マジで…?」
「マジマジ。おおマジ」
「ダメだよダメ。ボクはテクニックよりも重要な項目があるから」
「ほぉ〜。ファーストキスとか初体験の相手を決めてるんだ?」
「決めてはいないけど…そりゃあ、自分がこの人って認めた人じゃなきゃダメ。…そりゃ、ボクがまだ童貞じゃなかったら少しはそういうの許す事はあるんだけどさ。童貞だからね。っていうか、みんなファーストキスとかは男の時に済ませてるの?」
「みんなって、俺とむっつりんの事?」
「うん」
「残念ながら、キスは女になってからでした」
「えーッ。誰と?」
「えと、俺はキヨハルと。むっつりんは誰とだっけ?」
むっつりんはさっきからずっとカメラに収めた画像を見ている。アヤメに問われてはっと我に返った。
「…なに?」
「むっつりんの初体験の相手は?」
むっつりんは顔を真っ赤にして、
「まだ」
「キスもまだだっけ?」
「(こくり)」
「おー、ユウキちゃん、むっつりんがフリーだよ。この子とエッチしなよ」
「いやいやいや、そういう簡単に決めていいことじゃないから」
それにむっつりんだって、初体験だとかファーストキスの相手を慎重に選びたいと思っているは…ず…?あれれ?ボクがむっつりんの顔の様子を見てみようと目を合わせると、突然彼女は真っ赤に頬を染め、その後、その視線を右斜め下に視線を持っていく。これは何だ!何なんだよーッ!