20 ゾロ目の宿命を背負う男 7

「それで、次はどこへ行く?」
「ん〜そうですね」
こんなやり取りが二人の間で行われているので、すかさず僕は
「服屋に行きましょう」
と答えた。
「私は彼に聞いているのだ」
「ブラのホックとブラウスのボタンを直してもらうんだよ!」
佐藤さんは僕とクリさんが言い争いをする間に割り込んで、
「まぁまぁ、いきましょう」
さすが話がわかりますね。
そして、マップを確認してから一番近い下着店によった。そもそも佐藤さんの買い物にお付き合いしているわけだから、僕がアレコレと何が欲しいアレが欲しいだの言ってはダメなんだ。そこんところはちゃんと社会人として心得ているよ。
でも…。
とりあえず、外で佐藤さんを待たせて僕とクリさんが下着店へと入る。それはいいんだけど、どう考えても見せる為の下着しか取り扱っていない。なんでこんな派手派手でブラウスの下からでも見えてしまうような色合いの奴しか売ってないの。
「これでいいんじゃないか。頑丈そうだし」
とクリさんが持ってきたのは牛革とステンレスで頑丈に作られたビザールってメーカーの下着。いやこれは下着じゃないな。ちょうど乳首の部分はシースルー(網)になってて丸見え。どう考えてもSMな人が使うアレだよ。
「ダメだよこれは…」
「佐藤さんの買い物なんだから、あれこれと色々、」
「もうーっ!わかってるよ!」
白の下着がない。ダメだこりゃ。
僕は仕方なく一番地味な黒の下着を上下セットで購入して、もう試着室でさっさと着替えてホックが千切れてしまっているダメなブラをゴミ箱にぽいした。そしてブラウスの飛んでしまったボタンなどは店員さんにサービスとしてつけてもらったんだ。
「頑丈に縫ってもらったから多分大丈夫」
「ほう」
店を出てから佐藤さんと次にどこに行くのかのスケジュールを練ることにした。佐藤さんの買い物なわけだけど、どうやら僕やクリさんのような『お客様』が一緒だと自由に行動する気にはなれないらしい。
映画とか行きませんか、との事なのだ。
映画はいいねぇ。僕は売店で売ってるキャラメルポップコーンが子供の頃から凄く好きなんだ。他にもチョリスっていう棒状のお菓子もあって、あれはシナモンとキャラメルが掛かってる奴が好きだったなぁ。後はチキンナゲットかな。映画館で食べる奴は格別に美味しいんだよ。
「次の上映開始時刻は…」
時計を見る佐藤さん。
固まった。
「どうした?」
クリさんが尋ねる。
「たまたま時計を見たのに、11時11分11秒でした」
そういえばそうだ。クリさんが前に言った「実は視界に時計が入っていて、たまたまそれがゾロ目だったから脳に認識された」とは違う。たまたまじゃない。今回は見ようと思ってみたんだ。