20 ゾロ目の宿命を背負う男 9

「なんか、今日は色々と…変な事が起きるねぇ…なんだか申し訳ないし、今日はそろそろ二人ともお開きにしたほうがいいかもしれない」
とか佐藤さんが言っている。
映画館を出てから3人はブティックに行き、まるでレイプされて服を全部持っていかれて街中を全裸で彷徨っていたような少女、つまり僕の事だけど、それを連れて服を買いに来ていたんだよ。
「というのは?」
クリさんが返す。
「いやね、恥ずかしい話なんだけど、自分は運勢だとかを信じてるんでね。例えば嫌な事が沢山起きる日っていうのは実際にあると思っているんだ。そういう日には家に閉じこもってあまり行動しない。行動すればするほど色々と悪い事が起きる。行動しないっていうのは具体的には他人との接点を持たないというに限られてくるけどね」
「他人との接点。つまり運命というわけか。確かに運命から離れるには他人との接点を設けないのが一番近道と言える…が、今は検証中だ。その運命とやらを。私は最初は信じていなかったが、なんとなくその運命とやらを信じ始めている自分に気付いた。今は13時35分。これから14時になる。14時44分まで待つか、それとも2時22分22秒まで待ってみるか?何が起きるのか確認してみたい」
佐藤さんはちょっと小ばかにするように「お手上げ」のポーズをして見せて「ははっ。わかったよ、やってみようか。ただ、私が時計を見て偶然にもその時間になっているという可能性もあるよ」
「それはちょっとつまらないが、まぁいいじゃないか」
一体何がつまらなくて何がいいのやら。
「あたしが素っ裸になるのを楽しみにしているの?」
「いや」
「もう素っ裸になったからこれ以上は脱ぎようはないよ。っていうか、そういう2番煎じ的なオチを期待してもしょうがないでしょ」
「ウケを狙って全裸になったのか?」
「んなわけないじゃん!」
ブティックで一折の服を揃えて、着替えた。今日は僕だけ出費が激しいような気がするけど、きっと気のせいだよね。
それから通りのベンチに腰を掛けた。
僕とクリさんと佐藤さんの3人はただ静かにベンチで行き交う人をぼーっと見つめながら14時22分22秒…つまり2時22分22秒を待った。
そろそろだ。
何も起きない。
ん?もう2時22分になってるよ。
「ねぇ、クリさん、何もおき」って言おうとしたその瞬間だ。
メキメキ。
何の音だろう。メキメキ?
あ。
「このベンチ、あたし達の体重で曲がってるよ」
「ん?本当か?」
「え?」
3人は急いで立ち上がった、その瞬間。
ビリビリビリ。
何が起きたか、とりあえずご想像にお任せしようかとも思ったけど、言おうかな…。まず僕の服が脱げて全裸になった。あぁ、ご想像通りですよね。それからクリさんの服が脱げて全裸になった…。佐藤さんの服は脱げなかった、おめでとう。
「わかったぞ」
クリさんが全裸になって恥ずかしげもなく、胸も股間も隠さない状態で言う。
「えっと、何が?」
僕は胸と股間を手で隠して問う。
「ゾロ目の時間に全裸になる」
「さいあく…」