21 愛のエプロン料理王決定戦 3

さっそく僕はクリさんの部屋に行った。ユキも呼んで。
「その話なら既に網本から聞いているぞ」
クリさんはネット端末前の椅子に座って、床に座っている僕やユキを見下ろして言った。知ってるってどういう…?
「ユキも知ってるの?」
「知ってるわ。網本のバカから聞いたわけじゃないけど。宇宙旅行以外に魅力的な賞品が出ると言われてるから」
「ふーん…って何がもらえるの?」
ケルベロスの首輪よ」
「けるべろすのくびわぁ?」
「中国の遺跡から発掘されたのよ。年代は紀元前のものだと言われてるのに分析したらその時代に作られたものとは思えないらしいのよ。オーパーツという奴ね。しもべの『ケルベロス』にぴったりのアイテムでしょ?」
ちなみに、ユキのしもべっていうのはペットのブルドッグの事で、クリさんがマイクロマシンを使って神話に出てくるケルベロスみたいなのを作り出したんだ。ベースになってるのはブルドッグだけどね。
それにしても、絶対に騙されてるよ…。
「まず中国っていう時点で怪しいよ!ケルベロスは中国の神話には出てこないでしょ!絶対最近作られたものだよ!それをそれっぽく土の中に埋めておいて出土品って言って高く売ってるんだよ!」
「まぁ、いいじゃないの…。ケルベロスの首輪っていう知名度があるわけだから、例え嘘だとしても嘘だとわかるまでの間は価値があるわ」
いいのかよ!!
あとはクリさんだな…。最後の希望。
「クリさんはなんで同意したのさ!」
「私は単純にテレビ番組に出る経験をしたかっただけだ」
「いや、それなら前に網本が右翼としてテレビの取材受けてたじゃん」
「ドキュメンタリーではなくバラエティーにだ。というより、生放送らしいのでむしろそれに興味があるな」
「はぁ…あたしは出ないからね」
僕が自分の意見を言うと、珍しくユキとクリさんの二人は顔を見合わせて不思議な顔をしている。
「ん?なに?なんなの?そんな顔してもでないよ」
「でないのはいいが、賞品は見てないのか?」
「賞品?賞品って、ケルベロスの首輪?」
「いや。ドロイドバスターなんとかの人形では無かったかな?」
「ドロイドバスター・キミカの限定フィギュア?!」
「ああ、それだった」
やばい。僕も出ることになってしまった。