21 愛のエプロン料理王決定戦 5

「…からお越しの岸本ナオさん!」
司会者が僕の名前を呼ぶ。ひぇぇ〜。テレビで名前呼ばれてるよ、緊張するなぁ。スタジオに入ってスポットライトが当たって、客席に座っている男性達の目がこちらに集中している。苦笑いしながら出演者達が集まるところへ並ぶ。これから一人づつ自己紹介していくのかな。
「さて、ではお一人つづ、自己紹介をしていきましょう」
流石は歴戦をくぐり抜けてきた猛者たちだよ、緊張する素振りを見せずハキハキと自己紹介をしていく。クリさんの番になってマイクを向けられる。…この人も全然緊張していないなぁ。クリさんはエプロンの下は赤と白で綺麗に彩られたミニスカートタイプのドレスを着ている。女子高生ぐらいの年齢の女の子が無理に大人っぽいドレスを切るのは視聴者ウケがいいね。男性のギャラリーの視線もクリさんに釘付けになっている。特に胸の谷間に。
「自営業で何でも屋をしている栗原だ。みんなは私の事をクリちゃんと呼んでいる。おそらくクリ○リスの愛称と掛けているのだろう」
いやいや、かけてないよ!そんなスケベな呼び方してるのって網本だけだし!っていうか早速放送禁止用語でAIが自動でビープ音入れたし!
「ええと、せっかくいいあだ名があるのですが、馴れ馴れしくちゃん付けでは呼べませんので、クリさんと呼ばせていただきます」
司会者、うまくかわしたな。そして続ける。
「それでは次の方…えっと、」
ユキの自己紹介の番だ。クリさんが大人っぽい魅力に大してユキはミステリアスな魅力を纏っている。エプロンの下はゴシックロリータぽい衣装。いや、それはゴシックロリータっていうよりも魔女が着てそうなアレだよね…。まぁ着てるのが魔女なのは疑いはないけどさ。
「黒川ユキ。趣味は占いと呪術」
うわー…。
会場に冷たい風が吹き込んでくる。
冷たい風っていうと文字通りに冷たい風を連想させるけどそういうのじゃなくて、風邪の引き始めで背筋がゾクゾクする感じの、なんかその風に当たってると身体が段々と弱くなって最後には死んでしまうとかそういう系統のとにかく何か禍々しいものが流れ込んでくるんだ。
「…はいっ、ユキさんですね、よろしくお願いします」
ひぇぇ…司会者、フォロー出来ない。
そして、いよいよ僕の自己紹介の番だ。
「えー、では、この度、登場前での、つまり料理の評価をされる前の人気投票でナンバー1の座に輝いています、岸本ナオさん!」
え?何それ?聞いてないよ?
「えっと、え、えー。ありがとうございます!」
「また衣装も可愛らしいですね、男性の気をそそるような可愛らしいメイドさんの衣装で!」
会場から声援が。って何だ何だ?「ナオちゃーん!」って叫んでる一団が。あれはきっと網本の仲間だよ、そうだ、そうに違いない。そういう事にしておこうじゃないか。
「お、さっそくファンクラブも出来てますね!」
なんでだよ!!まだテレビ出てないのになんでファンクラブが出来てるんだよ!どこで知ったんだよ!
「写真集も出されたとか?」
してねーよ!だしてねーよ!って、なんでファンクラブの奴ら写真集っぽい本を持ってきて宣伝してるの?そんなの作った覚えがないよ!
「写真集なんて出してません!」
「おお、ふむふむ、なるほど。どうやらファンクラブは今日出来て、今日写真集をファンの方達が作ったみたいですね」
「仕事早すぎでしょ!」