21 愛のエプロン料理王決定戦 8

「えー、ナオ選手。服が乾くまでの間、下着の上にエプロンという挑発的な格好での調理となりました。なんとも男殺しな選手です。どんどんポイントが上がっていきますね」
僕はホログラムに表示されている現在のスコアを見てみると、時間経過とともにどんどんあがってきている。これは会場の男性が気にいったと思えばスコアがどんどん上がっていく仕組みなんだ。このまま行けば、もう僕は今作っている2種類の料理を完成させなくてもトップになるんじゃないのかな。冗談抜きにして。災い転じて福となすとはまさにこの事ですかーっ!
「では、ユキ選手のほうを見てみましょう」
カメラはようやく僕から離れてユキのほうへと移動していった。さっきから胸の谷間とか太ももとかにかじりついていたんだよね。このエロカメラマンが。
ユキの前に言って司会者は固まった。
しばらくその状態になってから、解説を始める。
「これは…確かに魚をさばいている…と言えるのですが、なんという事でしょうか。率直な感想を言いますと、グロイです」
僕はとりあえず魚を3枚におろすというのを電脳にインストールしていた調理用のプログラムに任せながらも、会場の観客の後ろに表示されているホログラムを見てみた。
うわ…。何これ…儀式?
魚の目玉がくり抜かれている。
目玉がない状態の魚はまだ生きているようで、ピクピクとしながらもユキによって刺身の状態に仕上がっていく。その様子たるは、まさに拷問だった…。
「ユキ選手、これはいったいどういう事なのでしょうか?何かの儀式なのでしょうか?」
「自分が殺される瞬間、相手を睨んで顔を覚えておこうとするというわ。それを避ける為に私はまず最初に目玉をくりぬくのよ。そうして恨みの念が自分に降りかからないようにするの。目玉をくりぬくときに見られてしまうけどね、ちゃんと自分を見つめないように向こうに向けたわ」
「…」
ユキは視線をちらと網本のほうへ向ける。
その視線に気づいた網本は立ち上がって、
「おい!何やってんだよてめぇ!俺に魚の視線を送るんじゃねーよ!」
ユキはさらに、くりぬいた目玉を二つ、網本の方へ向けた。
「てめぇ、喧嘩売ってんのか!」
席から立ち上がってユキの方へ向かおうとしてたところをまたスタッフに止められる網本。なんというか、食事前に色々と運動出来ていいですよね。そうそう、お腹を減らしてさ。