21 愛のエプロン料理王決定戦 10

一回戦が終わった。
一回戦は料理の味ではなくて料理を作る時の姿を評価するコンセプトなんだけれど、さすがファンクラブがあるだけはあります、僕はトップの成績を収めることとなってしまった。というか会場の票が殆ど僕かクリさんに集中したような感じになってる。下着にエプロンで料理をしてる人と手元で電子工作してるような人がトップに踊りでるんだから何が起こるかわかんないね。
「さて、2回戦目は…料理を作ることから一旦は離れて、料理を中心に置いた生活を演じてもらい、こういうお嫁さんなら一緒に御飯を食べたいな、と思わせる事ができた方が高得点となります!」
なんだそりゃ…。
なんだかコントで用意されるような縦割りにした部屋のセットが用意されてる。そこは縦割りにされているのを除けばテーブルもあってタンスやテレビ、座布団にカレンダーと、まるで新婚さんが暮らすような部屋だった。
えと、つまりここで料理を囲んで楽しく食べさせる事が出来たら点数が高いという事なのか。なんていうか、結婚生活も大変だなぁ。料理を旦那さんに食べさせるのも修行がいるなんて。
「では、まずはナオ選手!」
え、マジですか。心の準備がまだ出来てないよ。
「旦那を演じる方は客席の方から一人を抽選で選びまして、」と司会者が話した時、会場から一斉にブーイングの嵐が来た。どうやら抽選で選ばれた男の人が僕の旦那という事で、このお芝居に参加するわけだ。嫉妬のブーイングは普通のブーイングよりも嫌な空気になるなぁ。
中肉中背の30代ぐらいの男性がにへらにへらと笑いながら、頭を掻きながら、客席からやってくる。すごく嬉しそうだ。
「それでは、ナオさん、スタンバイお願いします」
ったく、まるでコントみたいじゃないか。
僕はそのセットの中で夕ごはんが並んだテーブルの横にちょこんと座ってあくまで芝居のなかの旦那の帰りを待つ。
「お二人がとても幸せそうな夫婦を演じることが出来たのなら、審査員から高得点が弾き出されるでしょう!」