11 忍び寄る者 3

ビデオのシーンは一之瀬村が見えたところまで進んでいた。
例の河のある場所。沈み橋がある場所だ。その橋を超える瞬間だった。
ビデオにノイズが入った。
2度、3度、「ジジッ…ジジッ」と音を立ててノイズが入る。
「何よこれ…」
と春日が言う。
そういえば思い出した。あの橋を渡る時にみのりは崩れかけたところをジャンプで交わしながら渡っていたような気がする。
「あの時みのりはジャンプして橋を渡ってなかったか?それでビデオに振動が伝わってノイズが入ったのかもな」
首を傾げて「そんなことしたっけ?」と言っているみのり。彼女はあまり物覚えはよくないほうだ。昔からそうだ。まぁ、それは仕方ないとして、本当にその振動だけでノイズが入るものなのだろうか…。自分で言ってみてちょっと納得が行かない感じもある。
だが、これから村の中を移動するシーンになると、俺が自分自身で納得行かなかった箇所が如実に現れてきた。
「あ!まただわ!」
そう、再びノイズが入った。
言い方を変えるのなら「ビデオが壊れたかもしれない」だった。さきほどのシーンでみのりがビデオを持ったままジャンプしたからか?
「ん?」と言って小林が突然ビデオを停止させた。停止させたシーンは村に入ってからだ。液晶のテレビの画面は真っ暗になって右端に「外部入力」の文字と、覗き込むように見ている俺達の姿が反射していた。
「どうしたんだ?」
「いやさ、さっきのノイズの途中で何か映らなかったか?」
「そうか?」
春日がビデオのリモコンを取り上げて、「じゃあコマ送りで見てみましょうよ」と言った。まぁ、そうなるな。俺達は昔、サークル活動の時と同じ様に…つまり、撮影した心霊ビデオの中から幽霊がどこにいるのかを探すように、コマ送りなどをしてみた。
まずは橋を超えるあたりで起きたノイズ。
画面がゆがむ。これは普通のノイズのようだ。正しく言うのならその歪みのせいでみんなの顔やら手足がゆがんでいるが、ノイズが起きている中で自分たちだけ歪んでいないのも変な話だからそれについては何ら突っ込むところはない。
橋を超えた後のノイズ。
コマを送っていくと、突然画面が真っ暗になった。
「こういう黒いところで幽霊が映るんだよな」
と小林が言う。
「お前が見たのってこの真っ暗な画面じゃないのか?」
「いや、この次だよ、なんか部屋みたいなのが映った気がする…」
春日のリモコンが震えている。震えながら春日はコマ送りボタンを押している。
「あ!」
部屋が映っている。部屋といっても広い。ソファーにテーブルに絨毯。ごく普通の家のリビング…のように見える。なんだこれは…。
「何…何なのよ…何なのよこれ…」
春日はリモコンを手放した。手が震えてる。
「どうした?」
「こ、これ、ここよ!」
「え?」
「ここよ!この部屋よ!」