11 忍び寄る者 4

「なんでこのビデオに私の家が映ってるの?!」
春日はみのりに詰め寄っている。みのりがビデオカメラを持っていたからだ。テープもみのりが持ってきたものだ。そうやってすぐに人のせいにするところとかは春日らしいと言えば春日らしいが、みのりは彼女の家に行ったことがないんだから言い掛かりである。
「しらない!しらないってば」と首を振るみのり。
常磐は春日の家を知らないんだぞ、どうやってこの部屋に入るんだよ?」
「…いや、まぁ…そうね」
直情的な奴はコレだから嫌だな。
「本当にこの部屋か?」
俺は停止中のその画面と部屋を交互に見てみた。確かにこの部屋だ。家具の配置も、時計やカレンダー、花瓶、本の配置も同じ。
守山がおずおずと立ち上がってから部屋をぐるぐると回り始める。
「ど、どの位置からとったのかな。ここかな」
守山が立った位置はとても奇妙な場所だった。
壁だ。
俺はこの撮影された映像が「心霊的なもの」ではなかったと仮定して、例えばテーブルやタンスの上にビデオが電源を入れっぱなしにして置かれていて、部屋の映像を淡々と映したのではないかと思ったのだ。しかし壁となると…。しかも明らかに人の背の高さの位置だ。
「撮影されたのはいつだろうか」
小林が言う。
なるほど。最初にそれに気づくべきだったな。この映像のなかにはカレンダーや新聞がある。いつのになっている?
「今月か」
春日は自らをだき抱えるように腕を組んだ。
「気味悪いわ」
「新聞は…?…ん。これ…」
「なに、ちょっとやめて…」と春日はそのまま画面から目を背けた。そのまま背後を向いている。
俺は新聞の日付を見ようとしたがさすがに小さすぎて見れなかったが、その新聞に映っている内容はわかる。一面にはカラーで写真があるのだから。その一面には国会で議員が何か話しているという状況だった。
「こりゃ…驚いたな」と小林。
「いつの日のかわかるのか?」
「この一面にある写真さ、例の国会で議員が殴り合いをしたってシーンだろ。これ、宮元が死んだ日の新聞だ」
春日は耳を塞いで、
「やめてやめて!やめて!やめてって言ってるでしょ!怖いってば!」
やめてと言われてもこの事実を一つ一つ確認しなけりゃ意味がないだろうに。しかしこうもあからさまに宮元が死んだ日の春日の部屋の映像が映っているのもなんというか、偶然というよりも人為的な何かを感じてしまう。だから心霊ビデオというのだろうか。クーラーが効きすぎているんじゃないかというほどに俺は今までに経験したことの無い寒気を感じていた。
そう、今までの心霊スポット巡りではあくまで俺達は「部外者」だったのだ。だが、今回は違う。宮元という死者が俺達のなかにはいて、そして映像のなかには俺達の仲間である春日の部屋の写真。
もうこの心霊ビデオの中では俺達は関係者であった。