10 太陽がたくさん 2

到着した場所は隣の市の海水浴場おで、キャンプ場がすぐ側の松林にある。隣が住宅街になってて、普通に生活してる人の隣でテントを貼ってキャンプをするという滑稽な状況が拝める。
親父の運転する車はそのキャンプ区画をゆっくりと走っていて、開いてるところはないか探してた。でも無い。どこも人、人、人。この住宅地の隣にある松林キャンプ場ってそんなに人気なのかな?テントだらけだ。
「うっは!こりゃキャンプ中止じゃねーのか」
日和が嬉しそうに言う。親父とお袋(新)が日和を睨む。
「な、なんだよ…。だってキャンプ場開いてないじゃん…」
「砂浜のほうも凄い人が沢山いそうだね」と俺も日和をフォローする。
親父が車を路肩に停めて、
「いいか、七海、日和君。家族で今日はキャンプに行くって決めたんだ。キャンプ道具だって買ったし、バーベキューの道具も食材も買ってる。この状況で中止なんてありえない」
でも、一体どこでキャンプするっていうんだろ。
「あ、そうだ!」
突然親父が何か閃いたかのような反応。
「何か名案あるの?!」
お袋(新)が目をキラキラさせて言う。
「会社の同僚がクルーザー持ってたんだ!そうそう。それを借りて船で無人島に行けば場所は嫌ほど開いてるんじゃないのかな」
え、ちょっ…。
「名案ね!!」
おーい…。
「ちょっと待ってくれよ」と日和が言う。そうだ、日和、反対してやれよ。どう考えても頭おかしいだろ、この二人。
無人島って水着の女の子がいねーじゃん…」
おいこら…。
「水着の女の子って、七海がいるじゃないか」「七海ちゃんの水着姿を見てればいいじゃないの」
おい。
「えーっ…。七海、お前スクール水着持ってきた?」
「持ってきてるわけないじゃん」
「じゃダメじゃん…俺スクール水着が好きなんだよ」
「知るか!」
両親は顔を見合わせてから、親父が「じゃあ途中のスポーツ用品店スクール水着でも買っていくか?」とか言ってる。
「いやいい。いらない。絶対に着たくない」と俺はもう反対。っていうか、日和が俺見ながらオナニーしますって公言してんだぞ。止めろよ親父…。
「日和、あんた男の子なんだから我慢なさい」とお袋(新)。
何を???オナニーを???
「ったく、しょうがねぇなぁ…。ビキニで我慢するか」
「なんで知ってんだよ!あたしがビキニ持ってきてる事」
「あのピンクのビキニだろ」
「『あの』って何?!『あの』って!」
「いや、まぁ…」
この野郎、人の部屋のタンスの中を探索してやがった!最低野郎だ!
「七海もいいよな?3対1だからもう確定だけど」と親父。
「え、ちょっ。嫌だよ。無人島でしょ?何もないよ?」
「何もないところがいいんじゃないか」
「水もないしトイレも無いよ?シャワー室もないよ?」
「父さんの時代はどこもそうだった」
「どこで泳いでたんだよ…」