10 太陽がたくさん 6

散々泳いでから船に上がった。
河で泳ぐのと違って水温は気温よりも温かい。外に出るのを躊躇してしまう。でもこのまま海に浸かっているわけにもいかないので…。そろそろあがろうかな。っていうかいつになったら移動し始めるのやら。
それにしても久しぶりに身体を自由に動かしまくった感じがする。俺はこの女の身体、自分自身の軽い身体を持ち上げる力すら使い切りそうになってしまっていた。ロープから登るにもゆっくりとゆっくりとひとつずつ上がらなければならなかったからだ。
「ふぃぃ…疲れた〜」
日和はデッキの上で備え付けの椅子に腰をかけて携帯ゲーム機をピコピコいわせていた。
「不健康だなー」
「おい、お前、今までの話の流れを全部無視したセリフを言うな」
「あぁ、カナズチだったね」
「しかし意外とお前って身体動かすの好きなんだな」
「別に。そうでもないかも?」
そういえば今何時ぐらいだろう?
俺は携帯をバッグから取り出して時間を確認してみる。夕方の16時。いい時間じゃないか。そろそろテント貼ったりとかする時間。
「やばいな。そろそろ島に行かないと」
親父が腕時計を見ながら操舵席に行く。
「どこの島に行くの?」
「砂浜があるような場所ならいいだろう」
「適当…」
「この道を行けば〜どうなるものか〜危ぶむなかれ〜危ぶめば道はなし!踏み出せば〜その一足が道となり〜その一足が道となる!迷わず行けよ〜行けばわかるさ♪」
道って言っても海の上だからどうやってそれが道になるのか。橋でもかけるつもりなのか。親父は誰かのそのセリフをそのまま適当な音調に合わせえて歌いながら船を適当な島へと運んでいった。