11 早速ですが…(以下略 3

真っ暗になった。
もう海水浴場の方からも真っ暗だ。
真っ暗なのがこれほど心細いとは思わなかった。
「戻ってこねぇぇ!!!!マジかよ!」
「マジみたい」
「あーくそ!腹へった!腹へったよーっ!」
日和は腹が減ったのか腹が痛いのかよくわからないようなモーションで砂の上にお腹を抑えて転がっている。このまま蹴ってみようかな。
「火を起こさないと」
「でもライターとかねぇし」
「ライターがなくても火は起こせるって、縄文時代の人とかが言ってた」
「あぁ。あれか。木の棒をこすって摩擦熱で火を起こす奴?」
「うん。あれやってよ」
俺はそう言ってそこらに転がっているであろう木の棒を求めて近くをウロウロする。日和がその光景を見て、
「あのな、俺が男だから何でも出来ると思ったら大間違いだぞ」
とかぬかす。
「棒を擦るのとか得意じゃん」
「おいやめろ」
「いつも擦ってるじゃん」
「上下に擦るのと回転させるのとは違う」
「…」
とりあえずどこからか流れ着いた木の板、それから木の棒を持って日和の前に行く。日和の手を取ってそれを持たせて、
「ほら、擦って」
「これだけじゃダメだろう。ほら、なんか火がすぐに付くようなチリジリとしたのがいるんだよ。チン毛みたいな奴」
「え?」
「チン毛みたいな木の奴だよ。擦っただけじゃ熱くなるだけで火はつかないんだよ。前にテレビでやってた」
「どれ?そんなのって落ちてなかったけど」
「ったく仕方ねぇなぁ」と言いながら日和は茂みのように向かった。そういうのをテレビで見ただけで知ってるのか?あれはテレビ用にとてつもなく火が付きやすいものなはず。だけれども日和は俺がイメージしていたまんまのチン毛みたいな木の根っこを見つけたみたいだ。それは乾燥して打ち上げられた大木の根元部分についていた。
「よし、これで擦って着火してみるか。まずは火がついたらすぐに火力を強く出来るようにくべておかなきゃな。炭を」