13 救助艇到着 4

俺と日和は貝掘りに夢中になっていた。
「うっひょおおおおおおおお!」
歓喜の声を上げる日和。
もうその岩場の砂浜はかなり掘りつくしていた。でもまだまだ砂浜があるぞ。こっちにもそっちにもあっちにも。潮が引いたらまだまだある。
俺は一箇所に穴を掘って海水を沸かせて、そこにしこたま掘りつくした貝を集めていく。
と、その時だった。俺も日和も夢中になっていたのでエンジン音に気付かなかった。船だ!船が近くにいる…。でも…クルーザーのエンジン音とは違うな?もしかして俺達を探してるのか?
「日和!船だよ!船!」
「え?マジ?」
二人共立ち上がって岩場の隙間から音の主を捜す。船だ!でも漁船ぽい。乗れたとしても5人ぐらい乗れるっていう個人持ちの漁船?そうか。この辺りに漁に来てたら俺達が遭難してたのを見つけてくれたんだ!
「おーい」と船のほうから聞こえる。年齢は60過ぎのおじいさんがこちらに向かってくる。白いシャツに薄茶色のズボン。正しく漁師の作業着って感じのを着てる。
「こっちです!こっち!」「やっと助けが来たぜ!」
俺達は手を振りながら漁師さんを歓迎する…んだけど、一呼吸置いてから漁師が叫ぶ。
「こら!なにしちょっか!貝掘り禁止が見えちょらんのか!」
ベタベタの地方弁で叫ぶおじいさん。…え?貝掘り禁止?
俺と日和が振り返ると…その無人島の岩場の壁にスプレーで『貝掘り禁止』の文字がでかでかと書かれてる…。マジで?
日和がおじいさんに説明する。
「あ、その、なんていうか、俺達ちょっとこの無人島に遊びに来てて、親とかが船に乗って帰っちゃって、そんで置いてきぼり食らってんです。それで食べ物なくて…」
「はぁぁ?」とおじいさん、ワケが分からんって顔。
「なんていうか、遭難?しちゃったみたいで」
「ここはな、無人島じゃけど他所様の土地なの。漁師の組合で管理しとるんじゃけぇ、入っちゃいけんの。あんたどこの子?」
「え、どこっていうか、えっと、」
「遭難?」
「ええ、まぁ…」
「ああぁ〜。じゃあわしの船で港まで連れて帰ってやるけん。そん前に掘った貝、海に戻しちょってくれ。等間隔でよ?」
…マジかよ。