2 新しい友達 4

そして最後にボクが気になっていた人は、どうもさっきからボク達が座っている席近辺が気になって仕方ない様子。ウロウロしてて、常にボクの視界の隅っこから消えない人だ。
髪はストレートで肩まで。よく見ると左右を三つ編みにしてる。メガネをしててそのセンスがいかにもガリ勉って感じだ。でもメガネっこってメガネ外したら美少女なんでしょ、あ、やっぱりよくみると美少女だ。それからもう一つ特徴を挙げるとしたら、他の人が着てる制服がだらしなさを演出するためにボタンを外してたりするのに対して、この子が着てる制服はボタンが取れてどっかに行ってる。いや、所々が綻んでたりよれてたり、汚れてたり、なんだか、一言で言うなら貧乏。
その貧乏な子は鋭い眼光でキヨハルが食べてるクッキーを睨んでる。
「キミ。汚いな。食べ物を粗末にしちゃダメだろ」
メガネをカチカチと手で持ち上げたり持ち降ろしたりしながら、その女の子はキヨハルが落としてるクッキーのカスを指差して言ったんだ。
「う〜?食べてもいいお〜」
キヨハルはニコニコしながら言うんだ。相変わらず可愛いなぁ。
「いいのか?すまない」
そのメガネっ子はキヨハルの胸の谷間とかに落ちてるクッキーの残りカスを…ってそっちを食べるんですか。それを摘んで口に放り込んでる。それも1回や2回じゃなくて、何回も慣れた手つきで摘んで放り込んでる。まるでハトが餌を啄ばむみたいな器用さがある。
さてと…アヤメさんの紹介を聞くことにするよ。
「そいつが竹井豊。名前に反して凄い貧乏なんだぜ。家は農家やってたんだけどさ、じいさんもばあさんも死んじゃって、両親は離婚後どっかに行っちまった。ユタカを置いてな。食べていく分には困らないけどもあれだろ、金が無いんだよな。自給自足の生活って奴だよな」
「わざわざ紹介ありがとう。でも自給自足を馬鹿にしないでくれたまえ。今の日本は海外からの輸入に頼りすぎているんだ。…もっと農家を大切にしないとね」
そう言って顔を赤らめてメガネをカチャカチャやってる。
「そりゃ言ってる事はわかるけどお金もないとダメだぜ〜。その制服だってゴミ捨て場から拾ってきたんだろ?」
「ち、ちがう。こ、これは貰った」
「誰に?親戚にか?」
「い、いや…バイト先の店長に貰った」
「どこのバイト?」
「ら、ラブホテルの清掃…」
みんなが動きを止める。玉三郎は雑誌を読むのをやめて赤らめた顔を半分だけ雑誌から出してじっとユタカを見てる。それから口を開いたかと思うと、
「ラブホのコスプレの衣装でござるな?」
とニヤニヤしながら言った。
「ちっ、ちがっ、うと思う…」
やっぱりラブホのコスプレの衣装なんだ…。