3 新生活・新部活 5

「アヤメ…もっと普通の部活を紹介してよ」と、ボクは美術部を出てからあの部員達に声が届かない位置まで着てから言った。
「普通…って言っても文化系の部活って大体ああいう感じだよ」
「もうそこがそもそも普通じゃないよーッ!」
「運動系の部活ならむっつりんがよく知ってるよ」
むっつりんはカメラをじっと見つめながら、
「まかせて」
と言った。
「なんだか今、一瞬凄い嫌な予感がした。ボクの第六感がそう警告音鳴らした。まさか覗きスポットを回るとかじゃないよね?」
「違うの?」
「違うよ!見学するの、ふつーに見学するの!」
というわけで、むっつりんが最初に案内したのはテニスコートだった。
「すっごい人だかり…何かあったのかな?」
「いつもこんな感じだよ」
「え、いつも?!」
そう。テニスコートの周りには女子や男子、男子については他校の制服を着た人までなぜか見てる。黒髪のポニーテールでスタイルが滅茶苦茶美しい美少女がプレイしてる。そうだよね、やっぱりコレが目当てなんだよね。中身が男だと知ってるのはこの学校の女子(元男の子)だけなんだけど、その女子からも人気があるというのも凄いな。
「あのスポーティーな人は誰なの?」
「お、さっそく興味深々だね。さすが愛華(まなか)先輩だ」
「マナカ先輩?」
「そそ。如月愛華(きさらぎ・まなか)。学校の内外で超がつくほど人気のテニスプレーヤーだよ。男だった時からテニスの腕は凄くってさ、それがそのまま女の子になったもんだから高校入学後いきなり県トップ。ひょっとしたら全国大会でもトップ取れるんじゃないかって言われてる。もともと男と女だと運動神経が決定的に違うからなぁ」
なるほど。普通にマナカ先輩の太ももあたりを見に集まってるわけでもないんだね、女性にしてはテニスが男性並にうまいのを鑑賞してるのかぁ。っていうか、相手の女子も上手。
「相手の人もうまいね」
「そりゃ中の人男だからね。っていうか、うちの運動系の部活の女子は全部強いよ。中の人が男だからね」
強くて美しい…きっと大会とかじゃ他校の女子がハンカチ噛みながらプレイを見てそう。隙がないね。