4 新聞部へようこそ 2

二人の声は、特にむっつりんの小さな声は聞き取りにくいけど辛うじて曇りガラス越しに聞こえる。
「い、いいのかい、本当に?(むっつりんの顔色を伺いながら)」北田が言う。顔が高揚してる。
「(こくり)」とむっつりんが頷く。
「でもこれって…本人の許可とか…貰ってるの?」
許可?
「大丈夫。あなたが話さなかったら」
「そっか…」
カチリカチリとマウスをクリックする音が部屋に響く。なんだろう?許可?ボクは背伸びをして曇りガラスから部室のPCの画面を覗いてみた。
「げぇっ!」
と、ボクは思わず声に出してしまった。小声だったから部屋の二人には聞こえていない。何故聞こえるかも知れないのにそんな声だしたかって?出さざる得ない状況だからしょうがない。
ディスプレイに映っていたのはボクだ。
みんなで机に向かって話している時にお菓子を取ろうとした瞬間の胸の谷間を捉えた写真、ブルマ姿で体育座りをしているところの様々な角度からの写真、更衣室で着替えている時のブラウスの間からピンクのブラが顔を覗かせている写真、極めつけは昨日のテニスウェアを着てるところの写真(しかもしれはマナカ先輩が抱きついてきてるレズっぽい瞬間)むっつりんのすばらしいカメラワークもさることながら、アイドルに匹敵する自分のルックスにナルシストではないけども驚くばかり。
うーん、是非ともボクも家のパソコンの壁紙に入れたい、じゃない!何勝手に撮ってるんだよーっ!
「ちょっと!何勝手に撮ってるんだよっ!」
「うわ!!これは、ち、違うんだ」
北田、ディスプレイの前に立ちはだかる。
「何が違うんだよっ!消してよ!」
ボクが立ちはだかる北田を押しのけようとした時、何か暖かいものが胸を包んだ気がした。カシャリとシャッターの音が聞こえて、その暖かいものが何か見てみると、ボクの胸に北田の掌が…。片チチを持ち上げるような感じで当たってる。
「あ」
「あ」
まぁここで普通の女の子なら「キャー!」とか言うんだろうけど男なのでそこはスルーで。冷静なボクに反して北田は顔を真っ赤にしている。
「ち、ちがう、事故、事故だよ!」
「事故なのは分ったから、消してよ!」
「ごめん…」
それにしても、掌、暖かくて気持ちよかった…。