6 体育祭! 6

ボクが着替え終わる頃、その時はもう既に早い人はプールサイドに出てしまって観客にご披露しているところなんだけど、まだ残っている人がいた。みんなが出ていくのを待っていたみたいだ。
そのうちの一人にボクは今更ながらにも目が釘付けになってしまった。
今更ながらって言ったのは、ボクはあれだけ周りに可愛い女の子がいて(しかも自分自身も可愛い女の子である)というのにも関わらず、誰か特定の人に対して「うわー、可愛い。この人彼女にしたいな(もしボクが男なら)」と言えるような人が居なかったという事が理由。
その子は髪はわりとボサボサしてて前髪は下ろしてる。それでいてメガネを掛けていて、もちろん美少女で。ここまでなら「ああ、メガネを掛けてる子が好きなのか」で終わると思うけど、ボクがさらに注目してしまったのは胸が大きいっていう事だ。胸が大きいというと外人のおっぱいみたいなワイルドなものを想像するかも知れない。だけれど違うんだ。胸は大きいけど身体は小さい。つまり、ロリ巨乳メガネ美少女…。もしこんなジャンルが存在するとしたらまさにボクがストレートに背筋がゾクゾクするほどに好きなタイプなんだ…。
その子が汗を流しながら、そして汗でちょっと着づらくなっているスクール水着を着ようとしていた。その水着の中に収まりそうにないような巨乳。いや、美乳。ボクはドキドキしていた。今までにない衝撃がそこにあったんだ。
ボクの隣ではむっつりんがその映像を捉えていたんだけど、出来ればあとでボクはその映像をコピーしてもらいたいと思ったぐらいだ。バックアップとして1枚のDVDに保存して鑑賞用として1枚。もし何かあった時のためにもう1枚バックアップをDVDに取って。それぐらいに目に焼き付けるだけでは物足りないぐらいのショッキングな景色が目の前にあった。
その子は着替え終わる最後まで自分が見られていることすら気付かないで必死に着替えていた。こんな変なイベントだけど「遅れてしまってはダメだから」と生真面目に頑張っている人のように映って仕方なかった。
「ふ、どうやらキミのストライクゾーンだったみたいだね」
とユタカがいつもの調子でメガネをキリリと上に押し上げてから言った。
「え、いやあの、えと、あの子、誰なの?」
ああぁ。ボクは動揺してしまって否定するのを忘れていた。完全にあの子の事について知りたくなってしまっていた。
「彼女は琴吹ヤヤ。生徒会の書記だよ。男の時からあんな感じで生真面目な性格で友達は居ない。テストで良い点数を取って順位が上になった時だけ存在感が出てきて、テスト期間が終わると再び空気のようになるっていう噂だ」
「ヤヤちゃんか…」
「お。さっそく下の名前で呼んでいるね」
「その、あの子はさ、彼女とか…いや、彼氏?は居るのかな?」
「ふむ。それは愚問だな…。さっきも言ったけど、よくいるぼっちなキャラだよ。話しかけても作り笑顔で返されるぐらいで、一言二言話してそれから続かない。悪い人では無いんだが友達が居ない、そういうタイプだ」
「そ、そっか…」
「ただ、今から競技で彼女と争う事になるわけだから、油断は禁物だな。出るからには勝利しなければ意味がない」
「う、うん。いや、そんなに真面目にならなくてもいいよ」
と、ボクとユタカが話してたらむっつりんが話に割り込んできた。
「どさくさに紛れてエッチな事をすれば」
「え、ちょっ」
「ふっ…」
まるでボクの心の中を見透かしているような、そんな笑みを浮かべてむっつりんは再びいつもの無表情に戻った。それからまるで戦場に向かう兵士のような背中を見せて、首に例の防水加工が施されたカメラを下げて、プールサイドへと向かっていった。
どさくさにまぎれて…。ボクにとっては不本意なこの行為。だけど、ボクの心の奥深くにある本性というか本音というか、いや、崩壊した理性の中にあるドス黒い欲望みたいなのが、あの子に抱きついてキスしたいとか…そんな事を思ってたり、そうでなかったり…。