6 体育祭! 8

ふと隣の騎馬を見てみる。
ユタカは男子達の募金により買ってもらったスク水を着てる。その姿が普段のユタカに比べて誇らしげに見えてしまうのは気のせいかな。やっぱりボロボロの体操服やブルマだとついつい恥ずかしくて背中を曲げてしまうらしい。今はこれでもかっていうぐらいに胸を張っている。
その下で男子達はユタカの股間のように顔を近づけるようにして「もうちょっとこっちのほうがよくないか?」「この位置ぐらいにするのがいいのかもしれん」「ちょっと腕のバランスが」とか真面目な顔をしてるけど絶対に太ももに頬をこすりつけようとしてるから!それ他人から見てもすぐにわかるから!気付いてないのは誇らしげにしてるユタカぐらいなものだから!
その隣でなにやら日本語ではない中国語っぽい言葉が聞こえてきた。リって言うクラスメートだ。彼女は騎馬戦が初めてなんだろう。いや、初めてでも周囲を見ながらどうやって上に乗るのかを真似るもんだけど、日本語が通じないのも相まって、変な乗り方をして途中で落ちている。しかもそれを何度も繰り返すもんだから本人も意地になって、転げ落ちそうになるところを男子に首根っこに抱きついて防いだりもしている。なんて幸せな男子なんだろう…。ボクも抱きつかれてみたい。
その隣では何やら腹を立ててる川尻お嬢様の声が聞こえてきた。
「ちょっと!触らないでっ!」
騎馬戦で触らないでは無理じゃないかな…。まぁ、気持ちはわからないでもないよ。川尻お嬢様の騎馬となっているのはあのパン食い競争にも出てきたクラスでも1位2位を争うデブだからだ。一番大きなデブが前、次に大きなデブが後ろの2名だった。
「あたくしがあなたの手のひらに足で体重を掛けるから、腕はあたくしの太ももには触れないはずでしょ?騎乗っていうのはおしりには体重をかけないものなのよ!」
今時自分の事をあたくしっていう人はじめてみたよ…。っていうか、川尻お嬢様の言ってる事は確かにそうなんだけど、それはそもそも馬に乗る時の話であって、人間が作った騎馬に乗るのは話がちょっと違うんじゃないかな。あとデブ2名が苦労して川尻お嬢様の言うようにやってるけど、デブなので腕が太くてどうしてもお嬢様の股間に当たっている。
「いや!いやぁぁ!ゾワゾワしますわ!鳥肌が立ちますわ!」
凄い嫌われようだな〜…。